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2014/01/30

2014/01/30

シャクヤク・孤高の黒紫

Shakuyaku02 Shakuyaku01

【学名】   Paeonia lactiflora
【英名】   Peony
【別名】  夷草(えびすぐさ)、貌佳草(かおよぐさ)
【生薬名】 芍薬(しゃくやく)
【科】     ボタン科

ボタン属を表す学名の「Paeonia(パエオニア、ペオニア)」は、ギリシャ神話の医療の「Paeon(ペオン)」の名に由来します。Paeon は、オリンポス山から取ってきたシャクヤクの根で冥王プルートの傷を癒したり、ゼウスの愛人レトが激しい陣痛に苦しんだ時、根を使って苦痛を和らげ、無事アポロンとアルテミスの双子が生まれた、などのエピソードがあります。(ヨーロッパではボタン、シャクヤクは同一視されており、薬効もほぼ同じ。)

同じ科の牡丹(ボタン)が「花王」と呼ばれるのに対し、シャクヤクは花の宰相、「花相」と呼ばれています。

万能薬ということで漢方薬の中でも極めて重要な植物の一つ。5年もの以上の根を乾燥させたものを用います。有名な「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」や四物湯(しもつとう)などの主要成分の一で、芍薬を単体で用いることはありません。
鎮痛、血行障害改善、記憶力向上、冷え性改善、抗アレルギー・・・と大活躍。
ですが、素人が用いるには危険な成分(ベオニフロリン)が含まれているので、毒草として認識しておいた方がよいでしょう。

西御門の自宅には、両親が20年以上丹精していた白いシャクヤクが数株あり、5月の半ばにいつも開花します。八頭身美人よろしく、すらりとのびた茎に小さなつぼみがつくのですが、その小さなつぼみにこれほどの花びらがつまっていたのか、と驚くほどの大輪の花が咲きます。

その姿には、他を寄せ付けない強烈な威厳と気高さを感じます。実際、何か他の花と合わせてアレンジを作る、というのが容易でない雰囲気。まさに孤高の美しさです。

花が終わってから夏頃まで蒼々とした葉が茂っており、生薬として名高い植物だけに「何か特別な色が出るのでは・・・」と前々から気になっていたので染めてみました。
アルミでやさしい黄色、銅でひき茶色は想像の範疇でしたが、鉄で五倍子(ごばいし)に似た黒紫が染まったのには驚きました!

薬効あらたかの由、煮出しているときは、確かに「漢方薬局」のようなにおいがします・・・。

花言葉は、「威厳」「荘厳」「はにかみ」。 5/10・8/2の誕生花。
色によって花言葉に バリエーションがあり、白い花の花言葉は、「満ち足りた心」。
俳諧では夏の季語。

参考サイト/文献

http://www.e-yakusou.com/
http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
http://members.jcom.home.ne.jp/tink/
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「生薬101の科学」 清水岑夫/著 講談社
・「新和英中辞典」 研究社

 (C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

 

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クヌギ・死者を悼むつるばみ色

Kunugi_t 写真出典

【学名】   Quercus acutissima
【英名】   Sawtooth Oak,King of Oak
【別名】   つるばみ(櫟)
【生薬名】  樸ソク
【科】    ブナ科

学名の Quercus(クワカス)は、ケルト語の 「quer(良質の)+ cuez(材木)」が語源。
クヌギの名は、国木(くにき)または食之木(くのき)からという二説があります。
日本人には関わりの深い樹木で、縄文時代から実を食用にしてきました。幹木はシイタケ栽培のホダ木に用いられたり、硬い材質から、建築材や器具材、車両、船舶にと広く利用されています。

古来からこの実を用いて染色することを特に「つるばみ染め」といいました。「延喜式」にその記述がありますが、幾通りもの解釈があり、その色の定義は難しいです。

現在では、灰汁、アルミで媒染した黄褐色を「黄つるばみ」、鉄で媒染した黒を「黒つるばみ」と称するのが一般的になっています。

黒つるばみ色は 平安時代は身分の低い人の衣装だったのですが(庶民が容易に手に入れられる染料、しかも麻が染まるから?)、平安時代の中ごろから 四位以上の公家の衣装・袍(ほう)に用いられるようになり、高貴な色となりました。また、平安時代になると仏教との関わりが深まり、法衣あるいは喪服に使われるようになります。
「源氏物語」に出てくる喪の場面では、関係の深さによってつるばみ色の濃淡を使い分けた様子が描かれています。

「櫟」のほかに「椚」や「橡」の字をあてることも。
「和漢三才図絵」には「久奴木」の綴りも見当りますが、トチやカシワとの混同もみられます。また「和漢薬」には「都留波美」の綴りも。

根皮・樹皮は「樸ソク(ぼくそく)」という生薬で、成分は主にタンニン。
その収れん(細胞膜の透過性を低下させる)作用により痔の出血、腫れ物などに効能があるとされ、「和漢三才図絵」では、スイカズラといっしょに煎じたものを悪性のできものに用いるとあります。

ヤシャブシに準ずる色合い。大変堅牢でどの媒染の色も力強いです。 実よりハカマ(=殻斗(かくと))の方が色が濃いです。枝葉ともに優秀。

確かに鉄媒染で得る黒つるばみ色は心に沁みます。静かに死者を悼むような、包容力のある黒です。濃度を落としたときに得られる鈍色(=グレー)も、やさしい気持ちにさせてくれます。

花言葉は、「おだやかさ」。

・http://www.hisamitsu.co.jp/syakai/kusuri/tushin06.htm#tushin11
・http://ja.wikipedia.org/wiki/クヌギ
・http://www.hana300.com/
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink/botan/flower2/flowers.htm
・http://www.jca.apc.org/MONODUKURI/pj/nishijin/2004/oct.html
・ http://211831.jp/blog3/?p=133
・http://www.bs-j.co.jp/iro/series/02.html
・「和漢三才図会」
・「和漢薬」 赤松 金芳/著   医歯薬出版株式会社
・「草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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