クヌギ・死者を悼むつるばみ色
【学名】 Quercus acutissima
【英名】 Sawtooth Oak,King of Oak
【別名】 つるばみ(櫟)
【生薬名】 樸ソク
【科】 ブナ科
学名の Quercus(クワカス)は、ケルト語の 「quer(良質の)+ cuez(材木)」が語源。
クヌギの名は、国木(くにき)または食之木(くのき)からという二説があります。
日本人には関わりの深い樹木で、縄文時代から実を食用にしてきました。幹木はシイタケ栽培のホダ木に用いられたり、硬い材質から、建築材や器具材、車両、船舶にと広く利用されています。
古来からこの実を用いて染色することを特に「つるばみ染め」といいました。「延喜式」にその記述がありますが、幾通りもの解釈があり、その色の定義は難しいです。
現在では、灰汁、アルミで媒染した黄褐色を「黄つるばみ」、鉄で媒染した黒を「黒つるばみ」と称するのが一般的になっています。
黒つるばみ色は 平安時代は身分の低い人の衣装だったのですが(庶民が容易に手に入れられる染料、しかも麻が染まるから?)、平安時代の中ごろから 四位以上の公家の衣装・袍(ほう)に用いられるようになり、高貴な色となりました。また、平安時代になると仏教との関わりが深まり、法衣あるいは喪服に使われるようになります。
「源氏物語」に出てくる喪の場面では、関係の深さによってつるばみ色の濃淡を使い分けた様子が描かれています。
「櫟」のほかに「椚」や「橡」の字をあてることも。
「和漢三才図絵」には「久奴木」の綴りも見当りますが、トチやカシワとの混同もみられます。また「和漢薬」には「都留波美」の綴りも。
根皮・樹皮は「樸ソク(ぼくそく)」という生薬で、成分は主にタンニン。
その収れん(細胞膜の透過性を低下させる)作用により痔の出血、腫れ物などに効能があるとされ、「和漢三才図絵」では、スイカズラといっしょに煎じたものを悪性のできものに用いるとあります。
ヤシャブシに準ずる色合い。大変堅牢でどの媒染の色も力強いです。 実よりハカマ(=殻斗(かくと))の方が色が濃いです。枝葉ともに優秀。
確かに鉄媒染で得る黒つるばみ色は心に沁みます。静かに死者を悼むような、包容力のある黒です。濃度を落としたときに得られる鈍色(=グレー)も、やさしい気持ちにさせてくれます。
花言葉は、「おだやかさ」。
◎参考サイト/ 文献
・http://www.hisamitsu.co.jp/syakai/kusuri/tushin06.htm#tushin11
・http://ja.wikipedia.org/wiki/クヌギ
・http://www.hana300.com/
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink/botan/flower2/flowers.htm
・http://www.jca.apc.org/MONODUKURI/pj/nishijin/2004/oct.html
・ http://211831.jp/blog3/?p=133
・http://www.bs-j.co.jp/iro/series/02.html
・「和漢三才図会」
・「和漢薬」 赤松 金芳/著 医歯薬出版株式会社
・「草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
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