シャクヤク・孤高の黒紫
【学名】 Paeonia lactiflora
【英名】 Peony
【別名】 夷草(えびすぐさ)、貌佳草(かおよぐさ)
【生薬名】 芍薬(しゃくやく)
【科】 ボタン科
ボタン属を表す学名の「Paeonia(パエオニア、ペオニア)」は、ギリシャ神話の医療の「Paeon(ペオン)」の名に由来します。Paeon は、オリンポス山から取ってきたシャクヤクの根で冥王プルートの傷を癒したり、ゼウスの愛人レトが激しい陣痛に苦しんだ時、根を使って苦痛を和らげ、無事アポロンとアルテミスの双子が生まれた、などのエピソードがあります。(ヨーロッパではボタン、シャクヤクは同一視されており、薬効もほぼ同じ。)
同じ科の牡丹(ボタン)が「花王」と呼ばれるのに対し、シャクヤクは花の宰相、「花相」と呼ばれています。
万能薬ということで漢方薬の中でも極めて重要な植物の一つ。5年もの以上の根を乾燥させたものを用います。有名な「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」や四物湯(しもつとう)などの主要成分の一で、芍薬を単体で用いることはありません。
鎮痛、血行障害改善、記憶力向上、冷え性改善、抗アレルギー・・・と大活躍。
ですが、素人が用いるには危険な成分(ベオニフロリン)が含まれているので、毒草として認識しておいた方がよいでしょう。
西御門の自宅には、両親が20年以上丹精していた白いシャクヤクが数株あり、5月の半ばにいつも開花します。八頭身美人よろしく、すらりとのびた茎に小さなつぼみがつくのですが、その小さなつぼみにこれほどの花びらがつまっていたのか、と驚くほどの大輪の花が咲きます。
その姿には、他を寄せ付けない強烈な威厳と気高さを感じます。実際、何か他の花と合わせてアレンジを作る、というのが容易でない雰囲気。まさに孤高の美しさです。
花が終わってから夏頃まで蒼々とした葉が茂っており、生薬として名高い植物だけに「何か特別な色が出るのでは・・・」と前々から気になっていたので染めてみました。
アルミでやさしい黄色、銅でひき茶色は想像の範疇でしたが、鉄で五倍子(ごばいし)に似た黒紫が染まったのには驚きました!
薬効あらたかの由、煮出しているときは、確かに「漢方薬局」のようなにおいがします・・・。
花言葉は、「威厳」「荘厳」「はにかみ」。 5/10・8/2の誕生花。
色によって花言葉に
バリエーションがあり、白い花の花言葉は、「満ち足りた心」。
俳諧では夏の季語。
参考サイト/文献
・http://www.e-yakusou.com/
・http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink/
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「生薬101の科学」 清水岑夫/著 講談社
・「新和英中辞典」 研究社
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