ヤマノイモ・滋養強壮、夜のお供の媚茶色
【学名】 Dioscorea japonica Thunb.
【英名】 Japanese yam glutinous yam
【別名】 ジネンジョ(ウ)(自然薯)、ヤマイモ、トロロイモ
【生薬名】山薬(さんやく)
【科】 ヤマノイモ科
夏になると、鎌倉の野山の草木が、よくヤマノイモ(ヤマイモ)のツルに、絡めとられているのを目にします。
そのつるの節々には秋口になると、ころりころりと大豆大のムカゴがなる! 染料取りに出かけた野山で、染料そっちのけでムカゴ取りに夢中になることもしばしば。
学名でわかるように日本原産で、本州、沖縄、朝鮮半島、中国に分布します。ヤマノイモの仲間は世界に600種類以上も知られており、栽培種のナガイモは中国原産、古くに日本に渡来してきたものだそうです。雌雄異株。
和漢三才図絵に、「薯蕷(ヤマノイモ)は渓(たに)の辺りに端を出し、時どきは風水に感応して鰻に変化する。半分鰻に変わっているのを見た人は往々にある。」という実に興味深い、オドロキの記述がみつかりました!
たまりません。江戸時代の人、お茶目にもほどがあります。ヤマノイモがふとした拍子にウナギになるって?! しかも、それをみた人はたくさんいる?! ・・・いやいや侮れません。
これを「江戸時代の人は非科学的」ととらえるか、現代人の「感性の退化」ととらえるかは意見の分かれるところでしょうが、一体どうすればヤマノイモがウナギになるかのと、思わず真剣に考えてしまう私です。どのパワースポットにヤマノイモを持ってゆくのがよいのか? 星の配置や月の満ち欠けは? 空気中の水分量は? ・・・どうしても見たいっ、ヤマノイモのウナギ変身!
根を干したものが「山薬」の名で知られる生薬。俗に精がつくと言われますが、体を温め、虚熱を清らかにする,精気がなくなり体がやせ衰えることを補うといいます。(これも和漢三才図絵)
実際、強壮、強精薬として胃を丈夫にして、精力をつける効き目があります。 また、慢性の下痢や、夢精、男女生殖器の衰弱にも用いられるとか。 植物に消化酵素を多く含むため、生食しても良く消化されます。 (だから、白米に比べて消化のよくない麦飯にとろろをかけて食べるのですね。)
[ヤマノイモ酒]
山薬(さんやく)約200gを刻み、砂糖100gをホワイトリカー1.8リットルに漬け、3ヶ月以上おいたものを1日1回30ミリリットルを就寝まえに服用すると、滋養強壮、精力減退、疲労回復に効き目があるとされます。
火傷、ひび、しもやけには根をすりおろして患部に塗ります。(但しアレルギー体質の人には不向きです。)
春に、若芽を摘み、生で天ぷら、茹でておひたし、あえもの、味噌あえ、汁の実に。
秋には、ムカゴを採り塩茹でや炒めのも、ムカゴご飯が美味しいですね。
秋から冬には、ヤマノイモを掘り取り、とろろ汁、山かけ、磯部揚げ、塩茹で、天ぷら、あえもの、煮物、いも粥、味噌和え、汁の実などに。
花言葉は、「気長」「芯の強さ」「恋の溜め息」「治療」「悲しい思い出」。
「ととろ汁」「むかご」なども含め、ヤマノイモは秋の季語。
ツルと葉の試染では、アルミで飴色、銅で路考茶(ろこうちゃ)、鉄で媚茶(こびちゃ)。
参考サイト/文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ヤマイモ
・http://www.e-yakusou.com/・http://www.hana300.com/
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink・http://keima.la.coocan.jp/
・http://www.t-webcity.com/~plantdan/index.html
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「食べる薬草事典」村上幸太郎/著 農分協
・「よくわかる山菜大図鑑」今井國勝・今井万岐子/著 永岡書店
・「和漢三才図絵」 第102巻
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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