キョウチクトウ・毒で守る国防色
【学名】 Nerium indicum Mill.
【英名】 Oleander
【生薬名】 キョウチクトウヨウ(夾竹桃葉)
【科】 キョウチクトウ科
地中海沿岸からインド原産。日本には江戸中期(享保9年・1724年)に渡来しました。
花が桃のようで、葉が竹のようであることからこの名がついたと和漢三才図絵にあります。
学名のNerium(ネリウム)は、ギリシャ語の「neros(湿った)」が語源。
この属の植物が湿地によく育つところから。
日本ではクローンが多いせいか、あまり実がつくことはありません。
大変強い毒性をもち、食すると激しい中毒症状を起こします。花、葉、枝、根、果実すべての部分と、周辺の土壌にも毒性があります。(!) 生木を燃した煙も毒。(!!) 腐葉土にしても1年間は毒性が残るため、腐葉土にする際にも注意を。(!!!)
毒性の主成分であるオレアドレナリンは、致死量が青酸カリを上回るといわれます。同時に強心の薬として用いることもあります。葉を乾燥させたものを夾竹桃葉といい、打ち身キズにはこれを煎じた汁で幹部を洗うとよいとされますが、素人は用いない方がよいでしょう。
乾燥や大気汚染に強いため、街路樹などによく利用されており、鎌倉でもあちこちに見ることができます。花の少ない真夏に、白や淡紅の花がひときわ美しいです。
その強靭な性質のゆえか、原爆の投下で75年間は草木も生えないだろうといわれた広島で、被爆焼土にいち早く花を咲かせたといいます。そのことから原爆からの復興のシンボルとなり、広島市の花に指定されています。
少量で濃い染液が得られ、どの媒染でも堅牢な色合いです。自らの身を守るために備わったその強い毒のなせる技か、どの色もとってもミリタリー。特に銅媒染で得られた色はまさに国防色です。
毒性を考えると、煮出している時の蒸気は吸わないように気をつける必要がありますね。換気は十分に。
花言葉は、「危険」「気をつけて」「恵まれた人」「注意」「友情」「用心」「油断大敵」「深刻な友情」。
とくに花の色が、赤は、「親友」、白は、「恵まれた人」、切花の場合は、「戒め」。
8/12・8/14・8/20の誕生花。
夏の季語。
参考サイト/文献
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第92巻
・http://ja.wikipedia.org/wiki/キョウチクトウ
・http://www.hana300.com
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink/
・http://www.e-yakusou.com/
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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