ゲッケイジュ・勝利の赤銅色
【学名】 Laurus nobilis L.
【英名】 Bay laurel,Laurel
【生薬名】 ゲッケイヨウ(月桂葉)、ゲッケイジュジツ(月桂樹実)
【科】 クスノキ科
南欧原産。日本には明治38年ごろ渡来しました。雌雄異株。4〜5月に黄色の小花を咲かせるとありますが、日本ではあまり見られないところをみると、雌木が少ないのかもしれません。
ギリシャ語では「ダフネ」。ギリシャ神話に登場するニンフの名前です。
【アポロンとダフネと月桂樹の逸話】
---川の神ベネイオスの娘ダフネは、月の処女神であり、狩猟の女神でもあるアルテミスを崇拝する美しい娘で、永遠の処女を誓っていた。
ある日、太陽神アポロンがキューピッド(エロス)の弓の腕前を嘲ったために、頭にきたキューピッドが、アポロンには恋をかきたてる「黄金の矢」を、ダフネには恋を消す「鉛の矢」を射てしまう。アポロンは、ダフネに一目惚れをしてしまい、ダフネを追いかけるが、ダフネはいやがって逃げまわる。
つい、捕まえられそうになったダフネは、父神ベネイオスに祈って自分を月桂樹に変えてもらう。
アポロンはとても悲しみ、月桂樹の枝をかき抱いてくちづけし、「あなたを妻にすることは出来なくなったが、私の神木にして、冠としてかぶろう。」と誓った。---
学士のことをバカロレアとかバチェラーbachelorというのは、中世ラテン語の「月桂樹の実 baccalaureatus」からきているそうです。古代ギリシャで詩人や学者が学問上の栄誉を受けた際に月桂樹の冠をかぶったことから、勉学が守備よく完成したことを表すといいます。
和名の由来は、中国の古典「英華字典」に、ノーブル・ローレルを月桂樹(げっけいじゅ)と訳したという記述があり、それをそのままを音読みしたものという説があります。
乾燥した葉や、秋に黒く熟した実を乾燥させたものを煎じて服用すると胃を丈夫にする作用があります。(苦味健胃) 葉を噛むと肝臓の働きをよくするという記述も見当たります。
ヨーロッパでは、昔から肉料理の香りづけに葉を用いてきました。パセリやタイムなどとともに、煮込み料理に欠かせないブーケガルニ(数種類の香草の束)には必ず入っていますね。
鎌倉市第二小学校の校庭に、昔、生徒の保護者が寄付したという月桂樹の木が、大きな大木に育ち、子どもたちが葉を乾燥させて、給食のシチューに使うなどの授業に取り入れられてきたそうですが、先頃、残念なことに鳥の糞害が原因で枯れてしまったのだそうです。
でも、その枯れた切り株の周りには、元気のよいひこばえが無数に芽吹いていたので、許可をいただいて、少し分けていただきました。
その若々しい生命力をうつすように、どの色も透明感と力強さがあります。煮出していると、家中に独特の芳香(シネオール)が強く漂って、とても気分が良くなります。おなかもすいてくる・・・。
染液は、時間を置くほど赤みを増し、特に銅で媒染した赤銅色が美しいです。
月桂樹全般の花言葉は、 「勝利」「名誉」。
木では特に「栄光」「栄誉」「輝ける将来」。
葉では得に「死すとも変わらず」。
花では特に「不信」「不誠実」「裏切り」。
参考サイト/文献
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ゲッケイジュ
・http://www.hana300.com
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink/
・http://www.e-yakusou.com/
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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