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2014/03/02

アンズ・はにかみのアプリコットオレンジ

Anzu02 Anzu01

【学名】  Prunus armeniaca
【英名】  Apricot
【別名】  唐桃(からもも)、甜梅(てんばい)
【生薬名】 杏仁(きょうにん=種)
【科】    バラ科

  

中国北部、ネパール、ブータンの原産。 アーモンドやウメ、スモモの近縁種で、そばにあると、かなり簡単に交配します。(ちなみに、白梅にアンズをかけた豊後梅は実が大きく、フルーティで梅酒に適します。カジュには3本の豊後梅があります♡)

ウメの果実は完熟しても果肉に甘みがなく、種と果肉が離れないのに対し、アンズは熟すと甘みが生じ、種と果肉が容易に離れます。(アーモンドは果肉が薄く食用にしない。)

サクラよりもやや早く淡紅の花を咲かせ、初夏にウメより一回り大きな実を結びます。
カジュの庭にあるアンズの木には、毎年プリプリの橙色の実がつくのですが、油断するとリスに先を越されてしまいます・・・。

種の殻の中にある「杏仁」はアミグダリンを多く含み、昔から去痰剤、咳止め、ぜんそくの薬として用いられてきました。種の35%ほどが油があり、これを杏仁油といい、腸の動きを活発にし、胆汁の分泌をよくするといわれています。

和漢三才図絵には、「杏実は持病を発動させるので、多食してはいけない、とくに妊婦は絶対に避けること」とあります。カジュになっているのを生でかじってみた事があるのですが、きれいな色に反して、かなりエグかったのを覚えています。干す、煮るなどして食べるのが美味しいのは、毒消しされるからかもしれませんね。

種の中にある胚をとくに「杏仁」といって、薬として重用します。杏仁豆腐は本来、この杏仁の粉を寒天で固めて作ったものですが、一般に市販されているものの多くは、牛乳カンにアーモンドエッセンスで匂いづけしたものなど、杏仁が含まれていないものがほとんどだそうです。杏仁豆腐にはJAS企画がないそうで、原材料の規定がありません。杏仁が入っていなくても違法ではないんだそうです。ほんとうに、ひとつの杏からちょびっとしか取れない杏仁でできていたら、ものすごく高価になってしまいますね。

【アンズ酒】
果実を採取して水洗いしてから水を切り、約500gに砂糖300gを加えて、ホワイトリカー約1.8リットルを入れて約3ヶ月漬けます。美しい琥珀色となり特有の杏仁臭さがでてきます。 疲労回復や鎮咳去痰薬(ちんがいきょたんやく)として1回30㎖ずつ1日2回食間に飲用します。

実がつく前の枝葉を煮出し、アルミかすずで媒染して、文字通りアプリコット・オレンジが染まったことがあります。煮出す時間が長い方が赤みが強いようです。一晩置けばさらに赤味がまします。また、ウールより絹の方が赤みが強くあがります。
銅で赤みの茶。実が終わった後だと、どの色も茶色っぽくなります。ウメと同じで季節や煮出す条件などで色が転びやすい染材です。

煮出しているとき、たしかにアーモンドオイルのような香りが微かにしました。

花言葉は「はにかみ」「乙女のはにかみ」「疑い」。「気おくれ」(実)
和漢三才図絵によれば、アンズの木は「東方木星の精」だそうですよ。

参考サイト/文献

http://www.e-yakusou.com/
http://www.hanakotoba.name/
http://ja.wikipedia.org/wiki/アンズ
・「草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社 
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「新和英中辞典」 研究社
・「生薬101の科学」 清水岑夫/著 講談社
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第86巻

(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

 

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