ホオノキ・包容力の海松色
【学名】 Magnolia obovata
【英名】 Japanese whitebark magnolia
【別名】 ホオガシワ
【生薬名】 コウボク(厚朴)
【科】 モクレン科
日本各地、および中国に分布。
他の植物の発芽を抑える物質を出す「アレロパシー」作用の強い樹木として知られ、このホオノキの周りには、他の植物が生えにくいといわれます。
ホオは「ほほむ=開かずそのままでいる」が語源で、冬芽の様子を表したことから。
樹皮はとくに「厚朴」という名の生薬として知られています。が、単独で使われることはなく、これを含む半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)は、動悸、めまい、咳、つわりの改善に効果があると言われています。和漢三才図絵では「誤用すると人の元気を奪ってしまう。妊婦は用いない」とありますから、素人処方はやめた方がよさそうですね。
葉には芳香と殺菌作用があり、葉が大きいことから、太古の昔から食べ物をのせるのに使われてきました。木の姿からも、大きくおおらかな形の葉っぱからも、「守るよ!」という包容力が感じられ、この葉っぱにごはんをのせたら、ほんとうに美味しそうです。
飛騨の郷土料理として「朴葉味噌」「朴葉寿司」は有名ですね。
幹材は、桐に似てやわらかく軽いです。昔から、下駄の歯、刀の莢、マッチの軸、版木、鉛筆などに用いられてきました。また、ホオの炭は垢擦りや鍋の焦げ落としに使われたそうです。
その軽さと細工しやすいやわらかさに着目した知人が、昔、特注で嵩の高い杼をデザインしたことがあり、わけてもらったことがあります。太い緯糸をたくさん巻いて使うのに重宝しています。
二階堂知人宅の庭木のホオノキの枝と葉を染めてみました。マグノリアの仲間独特の華やかな香りが湯気に漂い、アルミで落ち着いた赤みの黄色系(≒木蘭色)、銅でカーキー系、鉄で海松色系を得ました。
花言葉は「誠意ある友情」。
ふむ、ホオノキみたいな殿方、いいですねぇ。
参考サイト/文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ホオノキ
・http://www.e-yakusou.com/
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第83巻
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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