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2014/07/09

キンシバイ(オトギリソウ)・東西流血物語

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【学名】  Hypericum patulum Thunb
【英名】  St. Johns’wort
【別名】  クサヤマブキ(草山吹)
【生薬名】 ショウレンギョウ(小連翹= オトギリソウ)
【科】   オトギリソウ科

中国中部原産の半落葉低木。日本への渡来は1760年頃、以来様々な品種がつくられ、庭木として定着し、自生するようにもなりました。

漢字では「金糸梅」。雄しべが金糸を集めたようで、また、花の形がウメに似ていることから。学名のHypericum(ヒペリカム)は「オトギリソウ属」を表し、ギリシャ語の 「hyper(上) 」「 eikon(像)」が語源といわれ、これは魔除けの儀式の像の上にこの花を吊るしたことに由来するといいます。

オトギリソウ、ビヨウヤナギなどは同じ仲間。園芸の世界では「ヒペリカム」の名で近種を総称することもあるようです。

欧米に広く自生するのは近種のセイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)で、古来より広い薬効で知られており、十字軍も遠征に万能薬として携えていたといいます。

オトギリソウの英名では「聖ヨハネの草= St.John’s wort」と呼ばれます。
これは洗礼者ヨハネが首を切られた時に飛び散った血がこの草につき、それから高い薬効のある草になったことからこの名になったという説と、洗礼者ヨハネの誕生日である6月24日(ちょうど夏至の頃)に花がつくのでこの名になったという説があります。
今でもヨーロッパ各地では、この聖ヨハネの祭日には家々にこの草を魔除けとして家の軒先に吊るしたり、油をとったりする風習があるそうです。

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(ドイツ・ロックフェルドの野原に自生していたセイヨウオトギリソウ)

実際、2005年、ドイツでのアート・シンポジウム中に、滞在した村の野草でシルクを染めるワークショップをした時、ドイツ人の参加者に、「この草からとれる油が赤い色をしているので、もしかしたら赤が出るかもしれないので染めてみろ」と勧められ、試したところ、果たして、乾いた血の色のようなくすんだ赤になったのです!

近年ではセイヨウオトギリソウは抗鬱作用のあるハーブとしても注目を集めていますね。

和漢薬の世界では生薬名を小連翹(ショウレンギョウ)といい、煎じたものを服用すると月経不順や鎮痛に効果があるとされています。外用には必要時に適量の生葉を採取して用い、民間での創傷、打撲傷には、新鮮な葉からしぼり汁を取り、傷に塗布するとよいそうです。浴剤としてもリューマチ、神経痛、痛風などの鎮痛に効き目があるとされます。中国では根を利尿剤や乳の出をよくする薬として用いられてきたそうです。

ちなみにオトギリソウ(Hypericum erectum)は「弟切草」と綴り、ここにもオモシロい逸話があります。

平安中期、花山天皇((968〜1008年)の時代に京都にいた鷹匠の兄弟が、鷹の傷を治す家伝の秘薬としてこの草の煎じ薬を用いてきたのですが、ある日酒に酔った弟がその秘伝薬の製法を人に話してしまい、怒った兄に斬り殺された・・・という民話が名の由来になっています。

西洋・東洋ともこの草の仲間が「血」にまつわるエピソードを持っているのは実に興味深いですね。

鎌倉の二階堂川の川縁に、近所の庭から飛んできた種が根をおろした自生のキンシバイを見つけ、染めてみました。ドイツで染めたセイヨウオトギリソウのときと同じく染液は濃い赤茶となり、銅媒染で鮮やかな赤茶を得ました。そう、これまた乾いた血の色です・・・。煮出しているときの香りはセイタカアワダチソウに似た甘さのないすっきりした芳香。

Otogiriso

花言葉 は「悲しみを止める」「煌めき」。6月16日の誕生花。
セイヨウオトギリソウは「奇跡」「敬意」「迷信」
ビヨウヤナギは「有用」「薬用」
オトギリソウは「恨み」「迷信」「盲信」「信心」「秘密」

参考サイト/文献

http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
http://www.geocities.jp/aaaself/syu--mi/ha-bu/senntojyo.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/キンシバイ
http://www.hana300.com
http://www.e-yakusou.com
http://www.herbs2000.com/
http://www.patient.co.uk/
http://members.jcom.home.ne.jp/tink
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「学生版 牧野日本植物図鑑」  牧野富太郎/著 北隆館

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

 

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