サツマイモ・リベンジは鈍色
写真左→出典 右→IKI農園
【学名】 Ipomoea batatas Lam.var.edulis Makino
【英名】 Sweet poteto
【別名】 甘藷(かんしょ)、赤芋(あかいも)、蕃藷(ばんしょ)、 琉球芋、長崎芋
【生薬名】 カンショ(甘藷)
【科】 ヒルガオ科
学名の「batatas」は、 スペイン語で「サツマイモ」を意味します。Ipomoea(イポメア)は、ギリシャ語の「ips(芋虫)+ homoios(似た)」が語源。物にからんで這い登るところに由来するそうです。
メキシコ〜中南米原産。コロンブスのアメリカ大陸発見から、スペインに伝わり、フィリピン、中国、琉球を経て、1615年に、琉球から薩摩に渡来し、そこから西日本に広がりました。
実はアサガオ、ヒルガオの仲間。そういえば花がよく似ています。
和漢三才図絵には「甘藷」の名で「南方の人は米穀果として食べる。南海の人が多寿なのも、五穀を食べず、甘藷を食べるからである。」などの記述が見当たります。
ビタミンC、ビタミンE、イモ類の中では、特にβカロチンが豊富に含まれ、他に、カリウム、カルシウム、リンなどのミネラル分が多く含まれています。「和漢薬」には「胃・脾を健やかにし、腎を強くする」旨が記載されています。
荒れた土地にも栽培が容易なことから、江戸時代には飢饉対策に積極的に栽培されました。特に、1735年に、将軍徳川吉宗の命により、「甘藷先生」として知られる儒学者・青木昆陽が、江戸の小石川薬草園(現 小石川植物園)で栽培に成功した後に、幕府は、救荒植物として関東地方で栽培を奨励しました。
この結果、享保の大飢饉以降、関東地方や離島においてサツマイモの栽培が普及し、天明の大飢饉では、多くの人々の命を救ったと伝えられ,たいそうな評判をとりました。
後に青木昆陽は「いも神様」と呼ばれるに至り、千葉市花見川区幕張町の「昆陽神社」に祀られているというのですから、どれほど多くの命を救ったか、がわかりますね。
友人の運営する葉山のIKI農園で、収穫目前であったサツマイモが、なんと、イノシシの被害で全滅 !!!
実は、神奈川は意外とイノシシが多いのです。つい先頃は、鎌倉にも出没情報があり、市長自らが注意を促したほどです。
収穫を前にして、それまで一生懸命世話をしてきた作物を、イノシシの親子に全部持っていかれた農園の方々のご心中、いかばかりであったでしょう・・・。せめてもと、残った葉とつるをいただいて染めてみることにしました。
アクの強い植物は、例外なく良い染料となります。サツマイモも例に漏れず、どの媒染でも大変堅牢な色を得ました。煮出していると、サツマイモをふかしているような甘い香りが漂うのが、ちょっと辛かった(笑)。アルミで柳茶色、銅で海松色や璃寛茶(りかんちゃ)色、鉄媒染で洗練された鈍(にび)色。
ツルをとどけてくださった農園の方に、スカーフを一枚染めて差し上げましたが、少しでも悔しさが和らげば幸いです。
花言葉は、「慈愛」。
嗚呼、石焼きイモ、たべたーい!
参考サイト/文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/サツマイモ
・http://ja.wikipedia.org/wiki/青木昆陽
・http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
・http://www.hana300.com
・http://www.e-yakusou.com
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第102巻
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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