イネ・葉山のお米はいぶし銀
【学名】 Oryza sativa L.
【英名】 rice plant
【別名】 トミグサ(富草)、タノミ(田の実)、タナツモノ(穀)
【科】 イネ科
学名のOryza(オリザ)は、アラビア語の「eruz(米)」が語源。大切な食料であることから「いひね(飯根)」=イネと転じたという説、そのほか藁が生活の必需品になったこともあわせて「命の根」=イネと転じたという説などがあります。トウモロコシ、コムギと並んで世界3大穀物のひとつ。「五穀」は米、麦、粟、黍(または稗)、豆を指します。
現在世界で22種類が確認されており、20種が野生種、2種類が栽培種とされています。その2種類がアフリカ種とアジア種。アジア種はさらにインディカ米とジャポニカ米に分類されます。牧野植物図鑑にはイネはインド、マレー半島原産とありますが、ジャポニカ種は長江流域ですでに1万年前から栽培されていたらしく、ここを起源とする説が有力です。このジャポニカ種が縄文時代後期(B.C.11世紀ごろ)に日本に渡来したとされています。日本で本格的に水稲作が始まるのは、1〜3世紀頃。以来品種改良を重ねて東北から九州まで広まり、明治にはついに北海道で栽培されるように(世界の稲作の北限!)なるんですから、日本人、スゴスギ。
豊臣政権以後、江戸時代まで、日本の経済政策は「石高制(こくだかせい)」が用いられ、以来、米は「代用貨幣」の役割を担うことになります。
この石高制は、経済だけでなく身分秩序のモノサシにもなり、これにより一粒でも多くの米を作ることが、農民に課せられた使命となりました。
元来、林業、採取・狩猟によって豊かに暮らしてきた東北地方(義経が世話になっていた当時の平泉の栄華を見よ!)にも、無理な稲作を押し付ける結果となって、逆にかの地に慢性的な飢饉をもたらすことになってしまいました。その労苦がいかに壮絶なものであったかは想像に難くないです・・・。
本来、暖かな気候に適しているイネ。寒冷地である東北・北陸
、そしてついには北海道をその労苦の末、有数の米どころにした先人たちの知恵と努力には驚かされるばかりです。
以前、料理家のアメリカ人の友人が、「日本人に米の料理の新しいレシピを提案しても、まず受け入れてもらえない。ほんと、『米フェチ』だよね、日本人は。」とこぼしておりました。すまんのう、その通りじゃ。悪いが、ふっくら炊いたごはんに勝る米の料理法はないのじゃよ。去れ。
宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」の詩の中に、「一日に玄米4合と味噌と少しの野菜を食べ、」という下りがありますね。前から、一日に一人で玄米4合を食べるって結構なボリュームだな、と思っておりました。ま、当時はおかずがほとんどなかったことを考えれば、こんなものでしょうか。と思っていたら、鎌倉もののふ隊の鎌倉智士さんのお話によれば、鎌倉武士たちは、通常一日2食、ひとり5合の玄米を食べていたんだそうです!! 玄米は完全食品と言われているそうですから、これでよかったのかも。といいますか、近年、これほどまでに日本人が脆弱になってしまったのは、米を食べなくなったからかもしれませんね。みんな、行こう、米フェチ街道!!
鎌倉のお隣、三浦郡葉山町上山口地区には現在でも美しい里山の風景が数多く残ります。昔は「千枚田」と呼ばれるほどの棚田があったそうですが、手間ひまがかかり、生産効率が悪い棚田の維持は難しく、今はわずかばかりが残るのみ。目下、数軒の農家とNPO山里会(援農ボランティア)によって維持がされています。
そんな棚田のイネワラを山里会の大石美果さんに分けていただいきました。米の種類はキヌヒカリ。きれいな湧き水にも支えられた美味しいお米だそうです。イネ科の植物は総じて黄色が美しいのですが、液を一晩寝かせたところ、海松色、朽ち葉色などの、粋な渋みが出ました。
イネの花言葉は「神聖」。ワラ(藁)では「豊かさ」「一致協力」。「稲」で秋の季語。
参考サイト/文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/イネ
・http://www.t-webcity.com/~plantdan/index.html
・http://ja.wikipedia.org/wiki/石高制
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink
・http://gogen-allguide.com/i/ine.html
・http://www.hana300.com
・http://www.e-yakusou.com/
・http://www.jsnfs68.umin.jp/mame-chishiki-ine.html
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「街道をゆく 41」 司馬遼太郎/著 朝日新聞出版
・お話/協力 NPO山里会(葉山町) 大石美果さん
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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