オニグルミ・知謀の麹塵色
【学名】 Juglans mandshurica Maxim. var. sieboldiana Makino
Juglans mandshurica Maxim. var. sachalinensis (Komatsu) Kitam.
【英名】 Japanese walnut
【生薬名】 コトウニン(胡桃仁)
【科】 クルミ科
樺太、日本全土に分布する野生のクルミ。食用として市販されているテウチグルミやシナノグルミ、アメリカ産のクルミに比べて、オニグルミは実が小粒で果殻が堅くて厚いのが特徴です。そのため、食用となる仁の部分が酸化しにくく、長期間の保存に適しており,味も濃厚。果殻の表面にでこぼこがあり、醜いことから「オニ」の名がつきました。
和漢三才図絵によれば、クルミは漢の時代、武帝に仕えた張騫が、西域の大月氏国に使者に立った際、そこから中国に種を持ち帰ったのが、アジアに広まった始まりとされるそうです。それが、呉の国から渡来した実=「クレミ」(呉実)と呼ばれ、これが「クルミ」に転訛したという説、樹皮が黒いことから染料に用いて、黒む実(くろむみ)から転訛したという説があります。
日本では、古くからクルミの木の皮で染めた紙が使われていた記録があります。タンニンの多いクルミで染めることで虫除けになったのでしょうね。
一般に食用となる仁(果殻の中の実)には滋養強壮、咳止め効果があります。
夏に果実が青いときに採取して、厚い外側の皮をすり下ろした汁は、かゆみのある寄生性の皮膚病、しもやけ、ワキガ、水虫に効きます。
また、樹皮や葉の煎じ汁、外果皮のすりおろし汁には、発毛作用があるとされていて、その煎じ液で髪を洗うと髪が黒くなるともいわれています。
和漢三才図絵には、「仁を食すると、気を益し、血を養い、肌を潤し、鬚や髪を黒くする」とあり、さらに、「この汁に、同量のオタマジャクシを加えてすり潰して(ひょえ〜!!)塗ると、白髪染めになる」とあります。またまたやってくれます、江戸の人。侮り難し。試してみたいけど、かなり勇気がいりますねぇ。オタマジャクシのところだけ、誰かやってくれないかなぁ。
あ、ちなみに「酒とともに多食すると血を吐く」とも書かれていますので、お気をつけて。
染織家・山崎青樹氏によれば、葉、樹皮、青い果皮がよく染まるということ。乾燥させたものは染まりが悪いらしいですね。そういえば、子どもの頃、住んでいた北海道の近所の林でオニグルミの実をよく剝きましたが、アクで手が真っ黒になったのを覚えています。これが美しい黒を染める上げる要因でしょうね。
二階堂の友人が、油を絞るためにネットでオニグルミの実を手に入れました。売り手が、岩手県と秋田県の県境で自ら採取したものだったそうです。
仁を取り出したあとの果殻をもらい受けたので、染めてみることにしました。液は濃い茶になりましたが、それほど濃厚な色には染まらず、アルミで鶸色(ひわいろ)、黄唐茶色(きがらちゃいろ)、飴色、銅・鉄で麹塵色(きくじんいろ)、海松色(みるいろ)に。
俳諧では、花は夏の、実は秋の季語。
クルミの花言葉は、「知性」「謀略」「知恵」「野心」。
5/19の誕生花。
参考サイト/文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/オニグルミ
・http://www.hana300.com/
・http://www.e-yakusou.com/
・http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第87巻
・協力: 佐野武氏 大野右子氏
| 固定リンク | 0
「鎌倉染色彩時記(染)」カテゴリの記事
- ウイキョウ・妖怪召喚の蒸栗色(むしぐりいろ)(2024.11.29)
- カイヅカイブキ・昇り竜は萱草色(かんぞういろ)(2024.11.28)
- レモングラス・爽やかすぎる草色(2024.11.13)
- シークワーサー・南国発の淡黄色(2024.11.12)
- メラレウカ・ふとももパワーの漆黒(2024.10.30)
コメント