オオバコ・「もっと踏んで!」マゾっ気の藍墨色
【学名】 Plantago asiatica L.
【英名】 Plantain
【別名】 シャゼンソウ(車前草) 、ギュウイ(牛遺)、ギュウゼツ(牛舌)、バセキ(馬舄)
【生薬名】 車前(シャゼン)
【科】 オオバコ科
学名のPlantago(プランターゴ)は、ラテン語のplanta(足跡)が語源。葉の形を足跡に見立てたところから、という説、「足の裏で運ぶ」という説などがあります。
別名の「車前草」は、中国・漢の時代の将軍、馬武の逸話に由来しています。
【馬武将軍と車前草のお話】
馬武将軍は戦いに敗れ、部下の兵達を連れて荒野を敗走していた。日照が続いていたために食べ物も水も少なく、大勢の兵士が餓死し、生き残った兵士や馬も下腹が張って血尿が出始めた。しかし数日すると馬の血尿が治まる。馬が食べたと思われる草を煮て食べてみたところ、血尿が治る。将軍は全員にその草を煮て食べるように命じた。その草が、将軍の車の前に生えていたので、車前草と呼ばれるようになった。
日本では、咳止めの薬として古くから用いられてきました。そのほか、消炎、利尿、整腸の効果も。和漢三才図絵には、「目をはっきりさせる」という記述も見当たり、「今の人は鳥目(夜盲症)を治すのにナツメウナギに車前子(オオバコの種)をまぶして食べさせるが、これは根拠のあることである。」とあります。ウナギにはサンショですが、ナツメウナギにはオオバコですか!
牛馬が踏みつけた場所に生えやすいところから、ギュウゼツ(牛舌)、バセキ(馬舄)等の別名もあり、実際、踏みつけにはとても強いです。逆に、踏みつけられない場所では他の植物に負けて育ちません。
なるほど。一昔前まではどこにでも簡単に見つけられたオオバコですが、最近は鎌倉の空き地でもまとまった量を集めるのが難しくなってきました。思うに,空き地や野原で子どもが遊ばなくなった、舗装されていないところに人が踏み込まなくなった・・・これがオオバコが激減している原因ではないでしょうか。
今回、試染のためにと採取したオオバコも、稲村ケ崎にあった未舗装の青空駐車場。車に踏まれてすくすくと育っておりました。「踏んで、踏んで、もっと踏んでーっ。」と叫んではいなかったけど、みなさん、野原でオオバコを見つけたら、踏んでやってください。
踏まれた方がよく育つという、性質のせいか否か、いずれの色もたくましく堅牢。特に鉄媒染の青みを帯びたチャコールグレー、古代色でいうところの藍墨茶色(あいすみちゃいろ)が美しいです。
花言葉は、「白人の足跡」「欺瞞」「恥辱」。
参考サイト/文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/オオバコ
・http://www.hana300.com/
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink
・http://www.e-yakusou.com/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第94巻
・「薬草の自然療法」 東城百合子/著 池田書店
・「生薬101の科学」 清水岑夫/著 講談社
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