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2015/08/10

ルドベキア・スーザンの黒い瞳

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【学名】  Rudbeckia laciniata L.(オオハンゴンソウ)  Rudbeckia hirta(ヒルタ), Rudbeckia takao(タカオ)
【英名】   Coneflower, Golden Glow, Blak-eyed-Susan(Rudbeckia hirta)、Gloriosa Daisy(Rudbeckia hirta)
【別名】       オオハンゴンソウ(大反魂草)、マツバギク(松葉菊=八重)、 ハナカサギク(花笠菊)
     【科】   キク科

北米原産。明治中期に園芸種として渡来し、以来、日本各地で野生化しています。もともと日本にあったハンゴンソウ(反魂草=Senecio cannabifolius Less.)に似た大ぶりの花、という意味で、オオハンゴンソウ(大反魂草)という別名があります。すごい字面ですよね、魂に反する? あるいは反骨精神か?!いえいえ、なんと「反魂」には「魂を呼び戻す、死者を蘇らせる」という意味があるそうです。

かなりの品種があり、日本では、花芯が黒い(焦げ茶)ルドベキア・タカオさん、ルドベキア・ヒルタさんなどが人気で、庭に植えられたものが近年、猛烈な勢いで野生化しており、生態系に影響を及ぼす恐れあり、の理由から現在では外来生物法により特定外来生物(第二次指定種)に指定されています。

ルドベキア・ヒルタを英語で”Black-eyed-Susan”(黒い瞳のスーザン)と呼ぶのは、18世紀初頭のイギリスの詩人ジョン・ゲイの同名タイトルの詩に由来しています。(全文、訳文つきで末尾に記載)
戦場に船出しようとしているイギリス海軍水兵である恋人ウィリアム。出航の日、船上に別れを告げにきたスーザン。ウィリアムのスーザンへの思いが切々と語られ、最後はユリのような手をふって、スーザンが別れを“アデュー!”(なぜかフランス語)と泣きながら叫ぶところで詩は終わります。花びらに囲まれた黒い花芯が黒い瞳に例えられ、凛としながらも可憐なこの花の佇まいをみて、誰かがこの詩に詠われたスーザンを連想したのでしょうね。かわいい! 憎っくき特定外来種だけど!

欧米では、オオハンゴンソウの若い茎を春先に「健康に良い」と食す習慣があったよう。(七草がゆみたいですね。)さらに、茎を乾燥させてお茶にして飲むと消化不良を改善するとも。また、染料としても知られていて、花で緑を染めるという記述も見当たります。
ルドベキア・ヒルタは、根を煎じたものを服用すると、子どものむくみ取り、虫下しに効果、また、温かい煎じ液で創傷や毒蛇の噛みきずを洗うとよい、という記述も。

八幡宮の西寄りの谷戸の空き地に花盛りのルドベキアの群生見つけて、花ごと茎・葉を煮出してみました。キク科独特の辛口の芳香、液は驚くほど黒々とした濃い色となり、銅媒染でカーキーグリン(出た出たみどり!)、鉄媒染ではなんと、スーザンの魂が蘇ったような漆黒を得ました。

花言葉は、「公平」「正しい選択」「正義」「立派な」。
特に花びらの色が濃い黄色のものは「鮮やかな態度」。
7/21・7/31の誕生花。

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参考サイト/文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/オオハンゴンソウ属
http://www.hana300.com/
http://www.bartleby.com/40/276.html
http://www.tpwmagazine.com/archive/2008/may/scout3/
http://www.weblio.jp/
http://www.pfaf.org
・「新和英中辞典」 研究社
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

Black-Eyed Susan by John Gay

ALL in the Downs the fleet was moor'd,
 The streamers waving in the wind,
When black-eyed Susan came aboard;
    'O! where shall I my true-love find?
Tell me, ye jovial sailors, tell me true
If my sweet William sails among the crew.'

William, who high upon the yard
  Rock'd with the billow to and fro,
Soon as her well-known voice he heard
  He sigh'd, and cast his eyes below:
The cord slides swiftly through his glowing hands,
And quick as lightning on the deck he stands.

So the sweet lark, high poised in air,
  Shuts close his pinions to his breast
If chance his mate's shrill call he hear,
  And drops at once into her nest:—
The noblest captain in the British fleet
Might envy William's lip those kisses sweet.

'O Susan, Susan, lovely dear,
  My vows shall ever true remain;
Let me kiss off that falling tear;
  We only part to meet again.
Change as ye list, ye winds; my heart shall be
The faithful compass that still points to thee.

'Believe not what the landmen say
  Who tempt with doubts thy constant mind:
They'll tell thee, sailors, when away,
  In every port a mistress find:
Yes, yes, believe them when they tell thee so,
For Thou art present wheresoe'er I go.

'If to fair India’s coast we sail,
  Thy eyes are seen in diamonds bright,
Thy breath is Afric's spicy gale,
  Thy skin is ivory so white.
Thus every beauteous object that I view
Wakes in my soul some charm of lovely Sue.

'Though battle call me from thy arms
  Let not my pretty Susan mourn;
Though cannons roar, yet safe from harms
  William shall to his Dear return.
Love turns aside the balls that round me fly,
Lest precious tears should drop from Susan's eye:

The boatswain gave the dreadful word,
  The sails their swelling bosom spread,
No longer must she stay aboard;
  They kiss'd, she sigh'd, he hung his head.
Her lessening boat unwilling rows to land;
  'Adieu!' she cries; and waved her lily hand.

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黒い瞳のスーザンのバラード       (by ジョン・ゲイ)

人々は海岸線に集まった。艦隊は錨をおろしている。
船出を見送るテープが風に舞い踊る中、
スーザンは甲板にやってきた。
「ああ、どうやって愛しいあの人をみつければいいの?
教えて、陽気な水兵さんたち、お願い。
愛しいウィリアムがこの中にいるなら。」

ウィリアムは、大波にゆらゆら揺られながら 甲板に立っていた。
よく知る彼女の声を聞いた時、
彼はため息をつき、目を伏せた。
彼は火照る両手で綱を脇によせ、
まるで雷のように走り寄る。

さすれば、空高く舞っていたかわいいヒバリは
翼をとじて彼の胸に飛びこむというもの。
さすれば、彼女が甲高い声で彼を呼ぶのを聞いて
彼もまた素早く彼女のかいなに落ち着くというもの。
誇り高い貴族の英国艦隊長は、ウィリアムが恋人に口づけるのを
恨めしく思ったにちがいない。

「ああ、スーザン、スーザン、愛しい人、
僕の誓いは永遠だ。
落ちる涙を口づけで拭わせておくれ。
また逢うために別れるだけだ。
君が望むように帰ってくる。
僕の心は運命のコンパス、いつでも君を指している。

君の気持ちを乱そうとする
オカの人間を信じちゃだめだ。
奴らは君に言うんだ
『航海にでりゃ水兵なんて港港に女ありさ』
ああいいさ、奴らが言うことを信じても。
僕がどこへ行こうと君が平気だっていうんなら。

インド沿岸まで航海したら、
ダイヤモンドの輝きをみて、君の瞳を思うだろう。
アフリカの風をかいで、君の吐息を思うだろう。
象牙を見れば、君のその肌の白さを思うだろう。
何を見ても、かわいいスーザン、
君のなにかを感じてしまうだろう。

「君の腕の中から引き裂かれるように戦いに駆り出されても
美しいスーザン、僕は死んだりしない。きみを嘆き悲しませることはない。
たとえ大砲が唸りをあげても、僕は大丈夫。
ウィリアムは必ず愛しい人のもとに戻る。
愛の力で、大砲の弾が僕をよけて飛んでいくよ。
スーザンの目から大事な涙がこぼれてはいけないからね。

甲板長が残酷に声を上げた。
帆が、高鳴るふたりの胸を押しつぶす。
彼女はもう甲板にはいられない。
ふたりは口づけを交わし、彼女は溜め息をつき、彼はうなだれる。
彼女は力なく、小さボートで岸まで漕ぎ出す。
「さようなら!」と彼女は叫び、ユリのような手を振った。

訳 :  たなか牧子 (ちょっとJポッブ風で失礼。)

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