ミソハギ・みそぎの赤墨色
【学名】 Lythrum anceps Makino
【英名】 Misohagi, Loosestrife (=Lythrum salicaria・エゾミソハギ)
【別名】 ミズカケグサ(水掛草)、ボンバナ(盆花)、ソビソウ(鼠尾草)、ショウリョウバナ(精霊花)
【生薬名】 千屈菜(せんくつさい)
【科】 ミソハギ科
学名の属名を表す「Lythrum」は、ギリシャ語で「黒血」(=悪性の腫れ物などから出る、腐敗した黒みを帯びた血)を意味します。(!)
日本各地、朝鮮半島の山野の湿地に生える多年草。園芸用としても人気。英語名がMisohagiであるのをみるに、日本に古くからあることがわかります。
欧米から渡来した近縁種のエゾミソハギは侵略的外来種ワースト100に選定されています。がんばれ、日本のミソハギ!
ミソハギは、禊(みそぎ)+萩が語源。禊とは本来、神事に従う際、川の水で身を清めることを意味しますが、ちょうど旧暦のお盆の頃に花をつけるこの花は、お盆行事で花穂に水を含ませて、玄関や供物に水を振りかけて清めるのに使われるため、この名があります。
和漢三才図絵はそれについて、「別に意味はない。ただ穂花が長く、それを用いると水を濯ぐ(そそぐ)のに便利だから。」と、素っ気なく解説しながら、「茎・葉をあまざけに浸して陰地に投げ出しておくと、日ならずして蛞蝓(なめくじ)に化生するという。一つの不思議である。」とさりげなく衝撃的な一文を続けます・・・なんですって? ナメクジに変身する?!
江戸の感性、ほんとうに期待を裏切りません。これはやってみるしかありませんね。甘酒は、麹で発酵させたものがよいでしょうか。それとも、酒粕を使ったものの方がよいでしょうか。「陰地」はやはり、鎌倉にたくさん残る「やぐら」がいいでしょうね、きっと。
開花期に全草の地上部を採取して、天日で乾燥させたものを、生薬で「千屈菜(せんくつさい)」といいます。葉の20%含まれるというタンニンが主な有効成分。煎じたものを服用すると、下痢、急性腸炎、膀胱炎、むくみを解消するといいます。(急性腸炎にはゲンノショウコを併用するとよい。)
あせも、靴擦れ、股ずれ、草かぶれなどの湿疹、かぶれや切り傷などの止血には煎じ液を塗布すると効果。
若い苗は熱湯で茹でてから水にさらしてアク抜きをしてから、あえもの、炒め物、佃煮などで楽しめます。
花はそのまま生か、軽く熱湯を通してサラダなどで。
欧米でも古くから、近縁種のエゾミソハギ(Lythrum salicaria)が食用、薬用に用いられてきました。「歯肉を健やかにする効果があるため、子どもに茎を噛ませるとよい。」という記述も見当たります。
二階堂の永福寺跡地の近くのミソハギの群生が、ちょうど花が満開できれいです。すこし手折ってきて、煮出してみました。
学名の「黒血」をなんとなく連想してしまう赤黒い液となり、多く含まれるというタンニンの作用か、鉄媒染で、深い赤みの黒を染め上げました。
花言葉は「愛の悲しみ」「純真な愛情」「悲哀」「慈悲 」。
9/6・10/11の誕生花。
明後日はお盆の迎え火ですね。
参考サイト/文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ミソハギ
・http://www.e-yakusou.com/
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink
・http://www.hana300.com/
・http://ejje.weblio.jp/・http://www.pfaf.org/
・「季節の野草・山草図鑑」高村忠彦/監修 日本文芸社
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第94巻
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「広辞林」三省堂
・「新和英中辞典」 研究社
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