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2015/08/15

フジ・縄文の梅幸茶(ばいこうちゃ)

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【学名】  Wisteria floribunda
【英名】   Silky wisteria
【別名】  ノダフジ(野田藤)
【生薬名】 紫藤(シトウ)
【科】       マメ科

鎌倉の初夏、里山の山肌には美しい紫の差し色がはいり、フジがそこにあることがわかります。「よしよし、そこにいるな。」とその時は覚えたつもりでも、がツルを採るのに最適な秋になると、また森の中に同化してしまって見つからない・・・。やはり、花の時期に「そこ」まで足を運ばなくてはいけませんね。

「フジ」はツルが右巻き、 西日本の山野に自生する「ヤマフジ」は左巻き。いずれも万葉集にも出てくる、日本人とは馴染み植物です。
昔は「松にかかる藤」の意匠で松を男性、藤を女性のシンボルとし、松にかかった藤の姿を男女和合の相としました。

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徳力善宗/筆(江戸初期・西山本願寺別院)

フジの花の美しさは、古くから様々な形で愛され、歌にも多く登場し、また、江戸初期に近江(滋賀県)でうまれた民族絵画「大津絵」の画題に「藤娘」が登場してからは、それが日本人形や歌舞伎(日本 舞踊)などに発展して多くの人々に長く愛されてきました。

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写真出典
※大津絵・・・寛永年間、今から約350年前より大津に伝わる民画であり、東海道大津の宿で旅人の注文に応じて描かれた。7色程度で描かれた、簡素でのびのびとした描線が特徴。芭蕉が「大津絵の筆のはじめは何仏」(大津絵師の描き初めの絵は何の仏様であろうという意味)と詠んでいるように、もともとは大衆の信仰の対象として仏画から始まった。美人画、武者絵、鳥獣画、仏画などいずれも風刺とユーモアに富み、狂言や川柳に通じる笑点を持ち、今も大津絵のもつ人間風刺は人々に新鮮な感動をあたえ、親しまれている。(滋賀県HPより。)

藤蔓から繊維をとって織られる「藤布」は、古事記にも出てくるほど古い布で、木綿以前の日本の原始布の代表的存在でした。が、木綿の出現により徐々に衰退し、現在では、丹後半島の宮津市で細々と織られるだけとなっています。

藤の種は煎じて服用すると便秘に効果あり。花は酒毒を消します。和漢三才図絵には「(花を)煎じて糖のように服用すると、心の病を下す。」とあります。お花を煎じて心を癒す・・・効きそうですね。
花は天ぷらでも楽しめます。

古い藤の木にできる「藤瘤(フジコブ)」は、ガンに効果ありとされる妙薬として知られています。生薬の世界では「同じ形をしたものが、その形のものに効く」という「同形生薬」という考えがあります。フジの瘤をみて、人の皮膚ガンの形と似ていたので使ってみたら効果があった、というのがそもそもの始まりらしいのですが、効き目にはばらつきがあるそうです。そのことを後世に伝えるためにできたお話が「こぶとりじいさん」だという説があります。

なかなか手の届くところに見つからないので、今まで染められなかったのですが,やっと、琴弾橋のたもとに自生しているのを見つけて、試染できました。いずれの媒染でも、鎌倉の初夏の空気を思わせる軽やかさの中に、ガンも治すほどの薬効の高さをうかがわせてか、深い渋みのきいた色となりました。銅媒染の梅幸茶色が美しいです。

花言葉は「歓迎」「恋に酔う」「ようこそ美しき未知の方」「佳客」。
5/8・5/31の誕生花。
「藤房」「藤の山」「藤浪」「藤棚」「藤見」などとともに春の季語。

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参考サイト/文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/フジ
http://www.hana300.com/
http://members.jcom.home.ne.jp/tink
http://www.e-yakusou.com/
http://ejje.weblio.jp/
http://www.pref.shiga.lg.jp/f/densan/washi/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第96巻
・「食べる薬草事典」村上幸太郎/著 農分協
・別冊太陽「日本の布 原始布探訪」平凡社

 

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