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2015/08/08

ヒルガオ・聖と俗の青鈍色

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【学名】   Calystegia japonica Choisy
【英名】   bindweed
【別名】   コシカ(鼓子花)、アオイカズラ(葵葛)、カホバナ(容花)、聖母マリアのワイングラス
【生薬名】  旋花(センカ)
【科】     ヒルガオ科

北海道から九州、朝鮮半島、中国に分布。一回り小さいコヒルガオ、外来種のセイヨウヒルガオなども日本では広く分布しています。工房の近くの空き地に、去年ぐらいからお目見えしました。つる性でありますが、つかまるものがないと、地面を這うようにして広がり、空き地を覆い尽くしてゆきます。

「容花(かほばな)」の名で万葉集にも見られること、学名にjaponicasあることから、日本に古来からあることがうかがえますね。

花の時期に全草を乾燥させたものを生薬で「旋花(せんか)」といい、煎じたものは、糖尿病、利尿、疲労回復、強壮強精に効果。虫刺され、切り傷などには、生の葉を絞り、汁を患部に塗布するとよいそうです。

若葉、若い茎は、茹でて水にさらしてから、おひたし、和え物、油いため、汁の実にして楽しめます 。 花は生でサラダ、天ぷら、酢を入れた熱湯で茹でて、酢のもの、椀だねで。

ちょっと変わった別名「聖母マリアのワイングラス」は、グリム童話にその由来が出てきます。

【聖母マリアのワイングラス】

ひとりの御者(ぎょしゃ)が、ワインをたくさん積んだ車をぬかるみに落としてしまった。どんなに骨を折ってみても、ぬかるみから引き出すことができない。
ちょうどそこへ、聖母マリアがやってきて、御者の困っている様子を見ると、男にむかって、「わたしはとても疲れていて、のども乾いている。私にワインを1杯くれれば。あなたの荷車をぬかるみから出して あげよう」とおっしゃった。
御者が「喜んで差し上げたいがグラスがない」と答えると、聖母マリアは、白地に赤い筋の入った小さな花を手折った。その花はヒルガオとよばれる花で、ワイングラスにとても似ていた。聖母マリアはその花を御者に渡し、御者はヒルガオにワインをついだ。聖母マリアはそのワインを飲んだ。そのとたん荷車は、ぬかるみから出た。

ジョゼフ・ケッセルの同名小説を映画化した、1967年公開のフランス映画「昼顔」。
医師の夫と何不自由ない生活を送っていた美しく貞淑な人妻(カトリーヌ・ドヌーブ)が、心の内に押し込めてきた欲情を押さえきれず、迷ったあげくに昼間だけの娼婦として働き始める・・・というお話。
「昼顔」というタイトルは、単に「昼間だけ咲く(娼婦になる)」の意味だと思っていましたが、ヨーロッパの人たちにとって、この「聖母マリアのワイングラス」のお話が「桃太郎」のように広くみんなの知るものだとしたら、「聖母マリア」と「娼婦」の対比で、意味はさらに深いものとして伝わってきますね。

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(「昼顔」監督:ルイス・ブニュエル  フランス/イタリア 1967)

工房近くの空き地に群生している花盛りの昼顔を、花ごと煮出してみました。マメを煮ているような香りがしましたよ。アルミで白橡(しろつるばみ)、銅で松葉色、そして、鉄で青鈍(あおにび)色

この青鈍色は、聖と俗のように、相反するものが解け合ったときに出るような、底なし感というか、人間臭さというか、そんな一筋縄でない複雑な深みをたたえているように思います。

 

花言葉は、「和やかさ」「絆」「拘束する」「気分屋」。
7/17の誕生花。

参考サイト/文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/ヒルガオ
http://www.e-yakusou.com/
http://members.jcom.home.ne.jp/tink
http://www.hana300.com/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「新和英中辞典」 研究社
・「季節の野草・山草図鑑」高村忠彦/監修  日本文芸社
・「完訳グリム童話―子どもと家庭のメルヒェン集」グリム兄弟/編纂 小澤俊夫/訳 ぎょうせい

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

 

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