イヌビワ・蜂とちょっといい関係で松葉色
【学名】 Ficus erecta Thunb.
【英名】 ficus, Japanese Fig
【別名】 イタビ(イタビカズラ)、イタブ、コイチジク
【科】 クワ科
本州関東から沖縄、済州島に分布。和漢三才図絵によれば中国の四川の原産とあります。
夏から初秋にかけて、姫リンゴのようなかわいい実をつけるのですが、実はこれ、「花のう」といいまして、この中に「花」があるんです! 「隠頭花序」というそうです。そう、イチジクの"実"がこれと同じで、「ビワ」とありますが、実際は野生のイチジクの仲間です。和漢三才図絵に「花を咲かせず実をつける。」とありますが、これは、このように花が外からは見えないからなのですね。
雌雄異株。雌の木の"実"は甘く生食、ジャムなどで食べられますが、雄の"実"は食べられません。雌の"実"のほうが雄の"実"より先端の穴が小さい、雌の"実"は横に扁平、雄の"実"は縦長、で見分けがつきます。若芽、若葉は、軽く茹でて、スープの実、和えもの、炒めものなどにして食べられます。
沖縄では「アンマーチーチー」と呼ばれていますが、これは「お母さんのお乳」の意味。枝や幹を傷つけると白い乳液がでるところから。
日本には様々な「虫こぶ」(虫えい)が存在しますが、このイヌビワは、イヌビワコバチというハチと共生関係にありまして、"実"に産卵し、これが「虫こぶ」となることで知られています。産卵は、雄・ 雌どちらの"実"にも行なうのですが、イヌビワコバチの虫こぶは、雄の"実"にしかできません。雌の"実"では、コバチの幼虫がうまく育たないのだそうです。そのため、雄の"実"で花粉を体につけたイヌビワコバチが、雌の"実"にも産卵に来ることで、受粉ができ、イヌビワは種子を作ることができるというわけ。うまくできていますねぇ。
大町の琴弾橋のそばに実(花のう)をたわわにつけたイヌビワの木をみつけて、枝葉をとって、煮出してみました。リンゴのような甘酸っぱい香りが漂い、液は赤くなったのですが、その色は反映されず、ベージュから海松色、 松葉色などを染め上げました。
残念ながら、見つけた木は雄の木のようで、実はジャムには出来ない様子・・・残念。
花言葉は、「溢れる思い」。
参考サイト/文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/イヌビワ
・http://www.e-yakusou.com/
・http://www1.m.jcnnet.jp/hanazukan-mainn/hanaindex/aka/inubiwa.html
・http://www.hana300.com/
・http://www.t-webcity.com/~plantdan/index.html
・http://blogs.yahoo.co.jp/hidesan_0809/38176918.html
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第88巻
・「虫こぶ入門」薄葉 重/著 八坂書房
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