ムラサキケマン・毒食らわば璃寛茶
【学名】 Corydalis incisa
【英名】 Murasaki-keman
【別名】 ヤブケマン(薮華鬘)、タイツリソウ(鯛釣草)
【科】 ケシ科
日本原産。中国にも自生します。学名のCorydalis(コリダリス)は、ギリシャ語のKorydallis(雲雀:ひばり)」が語源。そういわれてみれば、花がヒバリがぴーちくぱーちくしているように見えるような気もしますが。
鎌倉では、木陰や崖下などの、直射日光を避けた場所によく生えています。日本各地に生育する一年生草本。葉がニンジンに似ていて、秋に芽生え、春にマメ科の花のような紫色の花を咲かせます。
漢字では「紫華鬘」。
華鬘とは、仏教のお供えの花飾りのひとつで、仏堂の内陣の欄間などにぶら下げます。金属でできたものなどが多いです。花の咲いたときの風情がこの華鬘に似ていることからこの名になったようです。別名のタイツリソウ(鯛釣草)は、花茎一本に花がたわわに釣り下がって咲く様が、鯛が釣竿にぶら下がっているように見えることから。
写真出典 愛知県春日井市 密蔵院蔵 華鬘十二流(面)
こんなに可憐な風情ですが、なんと全草が有毒。有毒成分は、アルカロイドのサングイナリン、テトラハイドロコリサミン、コリサミンなどと、けっこうな顔ぶれです。
死に至ることはないものの、誤食すると、涙と唾液の分泌が増えて嘔吐、酩酊状態、昏睡、呼吸困難や心臓麻痺で痙攣(けいれん)を起こしたりと、かなりゴージャスな中毒症状がでます。さすがケシ科。
なのに物好きもいるもので、ウスバシロチョウ(ウスバアゲハ)の幼虫の食草なのです。このためウスバシロチョウも有毒となるといいますから、怖いですねぇ。吸血鬼に噛まれて自分も吸血鬼になっちゃうのと同じですよ。
煮出していると、甘ったるい不思議な香りがします。前述の中毒症状を鑑みますと、あまり嗅がない方がいいかもしれません。
毒草はいい染料になることが多いので、かなり期待して染めてみましたが、あら、意外と普通。銅媒染の璃寛茶色、鉄媒染の海松色が堅牢な様子です。
花言葉は「助力」「あなたの助けになる」。
参考サイト
・http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ムラサキケマン
・http://www.hana300.com
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink/
・http://www.e-yakusou.com/
・http://www.geocities.jp/yunakisaragi/
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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