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2015/09/06

クチナシ・不屈の鶸色

Kuchinashi02 Kuchinashi

本州東海地方から西、沖縄、中国の山林には自生しているものが見られますが、現在、ほとんどは園芸種。実が熟しても開裂しないことが名の由来という説と、宿存萼(しゅくそんがく=果実が熟した後も残っているガク)を「くちばし」に、実を「なし」に見立てたことに由来するという説があります。

実はサツマイモのきんとんを黄色くするなど、黄色の染料(着色料)として知られていますが、近年では、クチナシの色素に酵素を加えて作る青の染料も安全な食品添加物として注目されています。また、アカネ科に属する特性か、赤の色素も取り出せるそうです。

和漢三才図絵には「巵子」の綴りで紹介されており「『巵』 は酒器である。実の形が酒器を象っている。それでこう名付けている。」とあります。

クチナシの白色の花弁は、芳香がありわずかに甘味があり、生のままでも、煮ても食用にできます。咲いたばかりの新鮮な花を煮ると粘りが出て、酢と醤油で味付けして食べるのが美味しいそうです。

生薬では実を「山梔子」といい、胆汁分泌の促進、鎮静、血圧降下に作用。古くから消炎、利胆、止血薬として黄疸、肝炎、血便、血尿、不安、不眠、吐血に用います。打ち身・捻挫には、粉にした山梔子を粉にしたものに同量の小麦粉、ショウガ汁、卵白を混ぜて湿布すると消炎効果があるとか。

1930年代から50年代にかけて活躍したジャズシンガー、ビリー・ホリデイ。人種差別、貧困、ドラッグ中毒、アルコール依存に縁取られた壮絶な人生を送ったこの偉大なシンガーは、ステージに立つ時、好んでクチナシの花を髪に飾ったといいます。「白」へのあこがれの表れだという評論家もいるようですが、実際はどうだったのでしょう。

Kuchinashi05_2

この真っ白な花を見るといつも、彼女の代表曲「奇妙な果実」の悲しい歌詞が花影に浮かびます。彼女が1939年に歌ったこの曲は、南部の高校教師が書いた一遍の詩が元になっており、奇妙な果実とは、リンチによって処刑され、木に吊るされた黒人の死体を指しています。黒人のビリーが当時のアメリカでこの歌を歌うというのは、まさに命がけだったと思います。

南部の木には奇妙な果実がなっている
葉には血が、根にも血が
南部の風に揺らいでいる黒い体
ポプラの木に吊るされている奇妙な果実
美しい南部の田園に
飛び出た眼、苦痛に歪む口
マグノリアの甘くさわやかな香り
そして不意に 太陽に焦がされる肉の臭い
カラスについばまれ
雨に打たれ 風に吹かれ
日に熟れて 落ちていく果実
奇妙で苦い果実

花言葉は「とてもうれしい」「私はあまりにも幸せです」「喜びを運ぶ」「清潔」「夢中」「優雅」。
3/16・3/19・6/7・7/7の誕生花。
俳諧では、花は夏の、実は秋の季語。

44歳で麻薬中毒で亡くなった彼女がこよなく愛した花の花言葉が「私はあまりにも幸せです」とは・・・。

乾燥した実を煮出し、アルミで媒染したところ、意外にも少し落ち着いた黄色(鶸色)に染め上がりました。ビリーの歌声のように強くてやさしくて、人の心に寄り添うような色合いです。

Crowed_sign_2

参考サイト/文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/クチナシ
http://www.e-yakusou.com/
http://members.jcom.home.ne.jp/tink
http://www.jugemusha.com/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「広辞林」三省堂・「薬草の自然療法」 東城百合子/著 池田書店
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第84巻
・「Billy Holiday - COMMODORE RECORDS」CD ライナーノーツ/ キングレコード

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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