マタタビ・骨抜きの黒紫
【学名】 Actinidia polygama Planch. et Maxim.
【英名】 Silver-vine
【別名】 ナツウメ / マンタブ(青森/秋田)、コツフラジ(岐阜)、
マタタンプ(アイヌ)、ネコナブリ(鹿児島)
【生薬名】 天木実(てんもくじつ=虫こぶ化していない実)
木天蓼子(もくてんりょうし=虫こぶ化した実)
天木蔓(てんもくつる=蔓)
【科】 マタタビ科
北海道を含む日本全土の産地の林縁に見られる落葉つる性木本。雌雄異株。
夏に、半夏生のように、一部の葉が白くなるので、遠目にもよく目につきます。6〜7月に白い花をつけ、そのあと実を結びます。
正常果はナツメに似た形をしていますが、マタタビミタバエが実に産卵することで、マタタビミフクレフシという虫こぶとなります。
この虫こぶは秋に採取して、熱湯をかける、又は短時間蒸してから、天日で充分乾燥させたものを生薬で木天蓼(子)といいます。(正常果(天木実)より効能が高いとされる。)
和漢三才図会には「痛風による顔の痙攣、気塊(気の滞り)、女子の虚労を治す」とあります。
マタタビ酒の作り方
・木天蓼(もくてんりょう)500g
・ホワイトリカー1.8リットル
・グラニュー糖か氷砂糖またはハチミツ100g
これを広口瓶に入れて3〜12ヶ月冷暗所に漬け込む。
布でこしてから1回量0.15gを毎日朝夕2回に分けて服用すると、冷え性、神経痛、リューマチなどに効き目があり、利尿、強心の効果を表す。
※塩漬け、砂糖漬けでも同効果。
名前の由来には諸説あります。
1.疲れた旅人が、この実の香りで元気になり、「また旅ができる」ようになることから。
2.果実に2種類あるので(恐らく正常果と虫こぶ)「マタツ実(ツは休め字)」と読んだ。
3.アイヌ語の「マタタンプ」による。「マタ」は冬、「タンプ」は亀甲を意味し、冬に木にぶらさがる虫こぶの様子を意味している。
乾燥した茎葉を袋にいれて浴剤として用いると、保温、疲労回復、腰痛、熟睡安眠の効果あり。 若葉は、さっと湯がいて味噌和えに。
マタタビに含まれるマタタビ酸 という成分が、動物の神経中枢を麻痺させる働きがあり、これが俗にいう「猫のマタタビ踊り」を引き起こします。
2016年8月上旬、長野県茅野市を走行する車に乗せてもらっている時に、崖の山肌に、半分白い葉を茂らせた木を発見! もしやと思い、車をとめてもらって確認したところ、マタタビで大当たり!
しかも、虫こぶがゴロゴロなっている!
後日、改めて拾い集めてもらったそれらの虫こぶを煮だしてみました。五倍子の名で知られるヌルデの虫こぶやブルーブラックのインクの原料となる没食子など、虫こぶは鉄媒染で美しい黒が得られることが多いので、ワクワクして糸を入れてみたところ、期待に違わず、藤鼠から黒紫を染め上げました。染色人、メロメロ。もう、マタタビ踊り!(時間が経過したら、少し緑味に変化)
量に対して、少し色が期待したより薄かったのは、採取してから3週間以上経過していて、かなり発酵していたせいかもしれません。この次はフレッシュをぜひ!
花言葉は「夢見る心地」。夏の季語。
参考サイト/文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/マタタビ
・http://www.sansaikinoko.com/matatabi1/riyou.html
・http://www.e-yakusou.com/
・http://karinninja.janken-pon.net/
・http://www.e-yakusou.com
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「虫こぶ入門」薄葉 重/著 八坂書房
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第84巻
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
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