リョウブ・香り高きマホガニー・ブラウン
【学名】 Clethra barbinervis Siebold & Zucc.
【英名】 Sweet pepper bush , Summer sweet
【別名】 ハタツモリ
【科】 リョウブ科
日本各地、済州島、中国山東省に分布。ただし、リョウブ属には数十種あり、アジアのほか、アメリカ大陸の熱帯・温帯に分布するものもあります。
木肌が滑らかなのが特徴。葉には産毛があり、縁に細かく鋭いギザギザがあります。葉が枝先に螺旋状につくので、上からみると、輪を描いているように見えます。夏に白い小花が華やかに房状につきます。
漢字では「令法」と綴ります。これは、若葉が食用になることから、救荒食糧として、採取、貯蔵をするよう令法が発令されたことに由来するそうです。平安時代から江戸時代には、飢饉に備えて若葉を蒸して乾燥して蓄えたといいます。
その他に花房の形を龍の尻尾に見立て、「竜尾(りょうび)」が転じたという説もあります。別名のハタツモリは「畑つもり」=畑の面積に応じて植え付ける作物の量のことを指しますが、このこととこの植物の関係はよくわかりません。牧野富太郎説では、「旗積り」。白い旗が数条重なりなびくの意であると。
和漢三才図会には「山茶科」「料蒲」の綴りで記述があり、「四月に若葉をつみ、よく水にさらして食べる。あるいは飯に混ぜたり、豆醤に和えたりして食べる。」とあります。実際、山菜として、春の若葉をそのまま天ぷらに、茹でて水か灰汁に浸してアクを抜き、ひたし物、いため物、汁の実、ご飯に混ぜてリョウブ飯などで楽しめるとのこと。古くから、リョウブを食べると「癪(しやく)を消して湿熱を去り、中を補うことができる」といわれています。
材は割れにくく、樹皮が美しいことから、床柱(和室の床の間)や器具材、庭木、公園樹に利用されます。
香りが高く、結晶しないことで知られるリョウブの蜂蜜は、5年に一度しか採れないとされ、珍重されています。
なぜ5年に一度?!・・・三浦の養蜂家・飯倉剛さんのお話によれば、花蜜源植物の花が蜜を出す(養蜂家の間ではこれを「吹く」というそうです)時、その量には波があるそうで、レンゲやクローバーのような一年草なら毎年量は安定しているそうですが、樹木の場合は当たり年、裏年があるといいます。リョウブは毎年花は咲くものの、蜂蜜を搾れるほど蜜を吹くのは5年に1度程度しかないということらしいです。5年もじっとためているわけですね。
小町にお住まいのCさんから、夏に花盛りのリョウブの枝葉をたくさんいただきました。煮出すと、びっくりするぐらいの赤い染液になり、どの媒染でも力のある強い色が染まりました。
アルミでアプリコットオレンジ、鉄で深い涅色(くりいろ)、銅では温かみのあるマホガニー・ブラウン。どの色も厚みがあります。
花言葉は「あふれる想い」。
春の季語。
参考サイト/文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/リョウブ
・http://www.e-yakusou.com/
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「和漢三才図絵第84巻」寺島良安 / 著 島田勇雄/竹島淳夫/樋口元巳 /訳注 平凡社
・「よくわかる山菜大図鑑」今井國勝・今井万岐子/著 永岡書店
・お話 養蜂家 飯倉剛氏
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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