エゴノミ・森の真珠はシルバーグリーン
【学名】 Styrax japonica Siebold & Zucc.
【英名】 Japanese Snowbell
【別名】 ロクロギ、チシャノキ
【生薬名】 摩厨子(まちゅうし=実)
【科】 エゴノキ科
学名のStyraxは、古代ギリシャ語で「安息香」を表すstoraxに由来します。(安息香の木もエゴノキ科)
和名の「エゴ」は、実に毒があり、果皮が「えごい=えぐい」ところから。
初夏に香りのよい白い花を咲かせ、夏に小さな丸い実がぶらさがるようにつきます。
タヒチの海ではシルバー・グリーンの真珠がとれるそうですが、このエゴノミは、まさにそんなタヒチアン・パールの輝き。木になる真珠の風情です。
この実の果皮には、エゴサポニンという成分が多く含まれ、そのため若い実は洗剤として洗濯に使われていました。また、エゴサポニンの毒性を利用し、絞り汁を川に流し、魚をしびれさせて捕る「毒もみ」漁にも使われたそうです。(この毒もみには、サンショ、クルミ、ウルシなども使われましたが、現在は水産資源保護法で全面的に禁止されています)
和漢三才図会には「山雀(ヤマガラ)が実を好んで食べる」とありますが、はて、ヤマガラはしびれないのかしら・・・?
シーボルトが幕末に記した「日本植物誌」にも、花の香りのよいこと、そのため自生だけでなく、寺社や庭園によく植えられることが記されています。
材は色が白く、弾力性があって丈夫で細工がしやすいことから、昔から天秤棒や蓑(みの)の縁に用いられたり、ろくろで細工するこけしや器、糸巻き、櫛、将棋の駒など生活の小物に様々に利用され、また建築材として皮付きのまま床柱にしたり、枝を茶室の天井材、窓格子材として用いられたりと用途はなかなかに広いですね。
番傘の骨を集めて開閉する円筒の部分(ろくろ)をこの材でつくったことが別名のロクロギの由来。
エゴノネコアシフシというアブラムシが実につくことで、実がバナナのような房状の虫こぶとなるのが面白いです。森の真珠、大化け。
小町の古い知人が、夏に、庭のエゴノキについた実を袋いっぱい届けてくださいました。
アルミまたはスズの媒染ででる、ほろ酔いの人肌のような水柿色が可憐です。銅で香染色、鉄媒染では、南洋真珠を思わせるシルバー・グリーン。
エゴノネコアシで染めると、鉄で黒紫が染まります。
花言葉は「壮大」。「えごの花」で夏の季語。
参考サイト/文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/エゴノキ
・http://www.e-yakusou.com/
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「シーボルト日本植物誌 [本文覚書篇]」
大場秀章 / 監修・解説 瀬倉正克 / 訳 八坂書房
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「和漢三才図絵第84巻」寺島良安 / 著
島田勇雄/竹島淳夫/樋口元巳 /訳注 平凡社
・「虫こぶ入門」薄葉 重/著 八坂書房
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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