カキ・渋味のきいたカミサマ色
【学名】 Diospyros kaki Thunb.
【英名】 Persimmon, Kaki
【生薬名】 柿蔕(してい)=へた、柿餅(しべい)=実、柿根(しこん)=根
【科】 カキノキ科
属名のDiospyrosは「神々の食べ物」の意。
和名の由来は、実や葉の赤い紅葉の様子から「アカキ」と呼ばれていたものが転じたという説、実の光沢から「カカヤク」が転じたという説、朝鮮語に由来するという説などいろいろ。
奈良時代ごろ中国から渡来したと考えられます。材は堅牢で、家具などに作られ、とくに黒柿は黒檀の代用にされていた歴史もあるそうです。が、一方折れやすいという面もあり、また、実が、甘いものが貴重だった時代に珍重され神聖視されたこととあいまって「柿から落ちると死ぬ」「柿を描く/食べる夢を見ると病人が死ぬ」などの言い伝えを生みました。
甘いものが氾濫している現代では、ちょっと想像しにくいですが、ポルトガルから砂糖が入ってくるのは桃山時代、しかもそのころは薬に近い貴重品。熟したカキの甘さはまさに神がかりだったのでしょう。
和漢三才図会には、柿に「七絶(7つの優れたところ)」があることが紹介されています。
曰く、
・寿命が長い
・木陰が大きい
・鳥が巣を作らない
・虫が食わない
・霜葉(枯れた葉っぱ)が美しく鑑賞にたえる
・果実が美味
・葉が滑らかで、臨書(ものを書き写すこと)に適する
7番目の「モノを書き写すのに適する」がちょっと不思議ですが、これも甘いものと同様、昔は紙が貴重品で、お習字の練習にいちいち紙を使っていたのでは、えらくお金がかかっていたことが伺えます。
日本語は、同じ音の言葉を違う漢字をあてて区別していますが、「音」が同じ言葉は、語源に共通性がある場合も多いです。全くの私見ですが、このカキの葉の特性に触れて、ふと、「かみ」も、もともとはすべて「神」に通じているのではないかしら、と思いました。言葉をとどめ、後世に伝える「紙」は、本来、とても神聖なものなのでしょう。そうそう、そういえば「髪」も女の命といわれてやはり大切にされるべきものですものね。
果実にタンニンが多いことから、柿渋は長く防腐・防水材として活用されてきました。
また柿渋は、止血・やけどやしもやけ・かぶれに患部に塗布するとよいそうです。
初夏になると、カキの木に若葉が出揃いますが、カキの若葉は、緑茶の約20倍のビタミンCをはじめ、脂肪や油を分解し消化を助けるタンニン、その他ケンフェロール、クエルセチン、グルコサイドなどが含まれており、ノンカフェインなので、蒸してから乾燥させてお茶にすることをおすすめします。血圧降下、血管透過性改善、止血に効能大です。みなさん、。どうぞ、今ぐらいからカキの木から目を離さないでください!(笑)
カキのへたを乾燥させたものを生薬では柿蔕(してい)といい、しゃっくりの特効薬とされています。干し柿は柿餅(しべい)、根は柿根(しこん)といい、吐血や下血を止める効果があります。
和漢三才図会でも「霜葉(枯れた葉っぱ)が美しく鑑賞にたえる」と絶賛されているように、柿の葉寿司に使われている紅葉した葉は、見ているだけで食欲をそそります。それだけでなく、タンニンとビタミンCにより、防腐効果もあるのですから、やっぱり神だわっ。
(photo from here)
剪定したカキの枝が手に入ったので、煮出してみましたところ、まさに柿渋色の染液となり、アルミや銅で黄唐茶(きがらちゃ)色から渋紙色、そして特筆すべきは鉄媒染の千歳茶(せんさいちゃ)色の底光りする輝き。まさに神がかりの美しさです。
「柿」は秋の季語。「柿若葉」「柿の花」「青柿」は夏の季語。
花言葉は「美しい自然の中に私を埋めよ」「恵み」「優美」「自然美」
9/26の誕生花。
参考サイト/文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/カキ
・http://www.e-yakusou.com/
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink
・http://www.kenseien.co.jp/kenkou/1247.html
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「和漢三才図絵第87巻」寺島良安 / 著 島田勇雄/竹島淳夫/樋口元巳 /訳注 平凡社
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