« 2017年1月28日 | トップページ | 2017年2月9日 »

2017年2月5日

2017/02/05

アスナロ・打倒ヒノキの珊瑚色

Aomorihiba01

【学名】  Thujopsis dolabrata (Thunb. Ex L.f.) Sieb. & Zucc. (アスナロ)
      Thujopsis dolabrata var. hondae(ヒノキアスナロ=アオモリヒバ)
【英名】  Dolabrata, Hiba
【別名】  ヒバ, アテ, アスヒ
【生薬名】 羅漢柏(らかんはく=葉)  ※誤用が定着?
【科】   ヒノキ科 


本州から九州の山地に自生。日本特産種。
学名のThujopsisは「Thuja(樹脂を出すある常緑植物の古名)」+「opsis(似た)」の意。dolabrata は「斧の形をした」の意。

平安時代からアスナロの和名は、「明日は檜になろう」からきているという通説がありますね。和漢三才図会にも、ヒノキの項目の中に「阿須檜(あすひ)」の名前で、「檜の一種」と紹介されていますが「木芯はマキに似ている。器につくるが脂がでて佳くない。これは檜とただ一夜の差(ちがい)があるためであろう か。」とあります。

ところが、この俗説、実は誤りという説もあるのです。古名「アスヒ」は「アテヒ」が転じたもので、「アテ」には「高貴な、貴い」という意味があるといいます。あらら?

子鹿のバンビの作詞者・坂口淳氏の書いた童謡「あすなろのうた」。これで現代におけるアスナロの立ち位置は決定づけられた感がありますね。

「あすなろのうた」

あすなろ あすなろ あすはなろう

おやまの だれにも まけぬほど 

ふもとの むらでも みえるほど

おおきな ひのきに あすはなろう

あすなろ あすなろ あすはなろう

あめにも かぜにも まけないで

ぐんと そらまで とどくほど

おおきな ひのきに あすはなろう

あすなろ あすなろ あすはなろう

とうげを こえる ひとたちの

ひるは ひかげに なるような

おおきな ひのきに あすはなろう

この歌には「子供たちには、いかなる境遇に生まれ育とうとも檜をめざしてほしい」という願いがあるとかないとか・・・。

大きなお世話である。

アスナロがアスナロであることを、喜んで生きて何が悪い。人様に他のものを目指せなど言われる筋合いではない。なんたって、「高貴な檜」なのだ。ほっといて欲しい。

抗菌・殺菌作用で知られるヒノキチオールという成分は、実はヒノキにはほとんど含まれていません。

1936年(昭和11年)、台湾に自生する「タイワンヒノキ」の精油から、当時の台湾帝国大学に赴任していた日本人科学者・野副教授が、世界で最初に発見したヒノキチオール。
日本列島で、ヒノキチオールを含む主な樹木は、なんと、アオモリヒバ(ヒノキアスナロ)、エゾヒバ、ネズコの3種類。 どーよ、ヒノキ。

ヒノキチオールには、殺菌力、抗菌力のほか、皮膚の傷の収斂(しゅうれん)作用”や細胞の増強作用もあることも明らかになり、最近ではこれに着目した、養毛剤や基礎化粧品なども開発され、主に「医薬部外品」を中心に活躍の場が広がっているといいます。1989年(平成元年)から「食品添加物」としての使用も法律で認められました。

昭和20年代には、精油が肺結核の治療にも効果があることが証明されたそうです。生薬ではこの精油は「羅漢柏」の名で今でも「和漢薬」に掲載されています。
しかしながら、その後、戦後アメリカから大量輸入されたストレプトマイシンなどの安価な抗生物質が出回ったため、遅効性、高価である、などの理由でヒノキチオールは医療の現場から消えました。
現代では抗生物質の弊害もいろいろ取り沙汰されていますから、また、医薬品として見直される日が来るかもしれませんね。

タイワンヒノキやアオモリヒバといったアスナロの仲間は、耐水性や耐久性に非常に富んでいるため、 特に、神社仏閣の建立や再建、補修に使われてきました。

特にヒノキチオールを多量に含むアオモリヒバは、腐りにくくシロアリに強いことから、東北地方の歴史建造物に多く使われており、「中尊寺金色堂」もアオモリヒバで建てられているそうです。
ふーん、ヒノキじゃないんだ、ヒノキじゃ。

というわけで、アオモリヒバは、かつては津軽藩の貴重な財源であったとか。「ヒバ一本、首ひとつ」と言われるほど、藩による徹底した管理がされていたそうそうですよ。津軽では、江戸後期になるまで、建築材として庶民がヒバ(アスナロ)を使うことは禁じられていたといいますから、ほんと、徹底しています。

耐久性を活用した身近な例には、「鉄道の枕木」もありまして、長くクリノキが使われていたことは知られていますが、実は、日本で最初にできた地下鉄「銀座線(渋谷~浅草)」の枕木には、アスナロが使われたのだそうです。

参ったか、ヒノキ!  誰もが君になりたいわけではない。アスナロ、万歳!

友人が箱いっぱい送ってくれたアオモリヒバの葉と枝を煮出してみました。おおっ、ヒノキチオール満喫! そして染め上がった色は、鉄で海松(みる)色、抹茶色、銅で媚茶色、そして、アルミで出たのは、宍色(ししいろ)、珊瑚色と呼んでいい、きれいなパウダーピンク! 長年ヒノキと比べられて、さぞや歪んだ性格になったかと思いきや、こんな可憐な色を出してくれて・・・。涙
残念ながら、日が経つに連れ、少し黄色味がかってきましたが、いい香りとともに、とても幸せな気持ちにさせてくれました。

花言葉は、「永遠の憧れ」「変わらない友情」「不滅」「不死」。

 

参考サイト / 文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/アスナロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒノキ
http://hanakotoba-labo.com/
http://www.kobayashi.co.jp/

・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「色の手帖」小学館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第82巻
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社

| | コメント (0)

« 2017年1月28日 | トップページ | 2017年2月9日 »