ダイズ・神通力の抹茶色
【学名】 Glycine max Merrill
【英名】 Soy bean, Soya bean, Japanese pea
【別名】 マメ、アキマメ、コマナ、エダマメ
【生薬名】 香鼓(こうし=黒大豆)
【科】 マメ科
中国原産。
古くから栽培されており、「五穀」に数えられています。
◆「五穀」
◎稲・麦・粟・大豆・小豆(『古事記』)
◎稲・麦・粟・稗・豆(『日本書紀』)
ヨーロッパには18世紀、アメリカには19世紀初頭に伝わったとかで、あら、かなり最近なんですね。
そういえば、戦後すぐに、日本の醤油メーカーがアメリカで醤油を売り出そうとした時、「腐っているから許可できない」「バグ・ジュース(虫の汁)か?」などの言いがかりをつけられたといいます。
それを、身体に害のない成分であることを科学的に証明した論文を作成し、バーベキューをしている家庭にセールスマンが乗り込んで、実際に使ってみせたりと、まさに血と汗と涙の努力でマーケットに参入を果たしたのだそうです。
しかし、バグ・ジュースって・・・。知らないものに対する憎悪の念、怖いですね。
ワンピースのルフィみたいに、新しいものに出会うたびに、目を星にして「すっんげーっ、おもしれーっ」とわくわくしてみる寛容でポジティブな心は、いつも持っていたいものでございます。
戦後日本人の、この凄まじいまでの生きる力は、「生き残ってしまってすまない」という気持ちが根底にあるような気がしてなりません。この醤油の例に限らず、その自責の念が、今日の日本の基礎を作ったのではないかと、時々思います。
マメ科はツル性のものが多い中で、茎が直立するところからエダマメの別名が。
学名の「Glycine」は糖原性アミノ酸を指します。もとはギリシャ語の「glycys(甘い)」が語源。
書物に最初に登場するのは古事記で、スサノオノミコトがオオゲツヒメを殺めたところ、その遺体の、頭に蚕、目に稲、耳に粟、鼻に小豆、陰部に麦、尻に豆(大豆)が生まれたというエピソードが見られます。(すっんげーっ、おもしれーっ)
和漢三才図会には、現代ではそれぞれ区別されるマメが、総称してダイズとして扱われており、「黒・白・黄・褐・蒼・斑といった数々の色のものがある。黒いものは薬に入れてよく、また味噌や納豆に作る
とよい。黄のものは豆腐に作るとよく、また油を搾って醤(ひしお=醤油)を造る、その他のものは炒って食べるぐらいである」という記述があります。
味噌は本来、黒豆で作られていたことが興味深いですねー。よーし、今年の味噌は黒豆で仕込むぞ!
節分の豆撒きでダイズを用いるのは、ダイズに鬼や悪霊を払うことができる聖なる力があるとされるため。マメを焼いてその年の吉凶を占う風習もあったそうです。
漁師が出漁の際にダイズをもっていくのも、海難などの災厄を払うためとされます。
漢方では特に黒大豆(黒豆)を用いる。完熟した黒大豆を発酵させて干したものを香鼓(こうし)といいます。他の生薬と配合して消炎、消化、健胃に用います。また炒った黒大豆をすりつぶしたものを酒につけたものを「豆淋酒(ずりんしゅ)」といい、冷え性、低血圧症に効果があるとされています。
昨年の夏は、在来種の種(たね)の普及活動をしている友人から、へっころ谷(ここのほうとうは、自家製のダイズで仕込んだ味噌が使われているのです)のダイズを手に入れたので、カジュの庭で育てました。作付面積がイマイチなので、余りたくさんはできませんでしたが、それでも700グラムほどのダイズが収穫できました。
収穫の終わった大豆の茎と葉を煮出してみたところ、アルミで白つるばみからクリーム色、 銅で抹茶色から柳茶色、鉄で海松色、麹塵色。
花言葉は、「親睦」。 秋の季語。
参考サイト/ 文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ダイズ
・https://ja.wikipedia.org/wiki/五穀
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink/
・NHK番組「プロジェクトx 醤油 アメリカ市場を開拓せよ」
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「色の手帖」小学館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第104巻
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
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