ヤブニンジン・気満ち満ちたる若草色
【学名】 Osmorhiza aristata
Osmorhiza aristata Rydb. var. montana Makino
(ミヤマヤブニンジン)
【英名】 sweet chervil
【別名】 ナガジラミ(長虱) ササハソラシ
【生薬名】 藳本(こうほん)
【科】 セリ科
学名のOsmorhizaは、ギリシャ語の「osme(香気)+ rhiza(根)」が語源。
日本、朝鮮、ロシア、中国に分布。
和名は、葉がニンジンに似ていることから。実際、自宅の裏庭に見つけたときは、ほんとうにニンジンが生えてきたのかとぬか喜びしてしまったほど、葉っぱがニンジンに似ています。5,6月に白い小花をつけます。花には両性花と雄花があって、花の後、線香花火のように広がって実を結びます。
鎌倉では、同じ仲間のヤブジラミ、セントウソウ、セリとともに、湿気の多いところによく自生しているのが見られます。
若い葉はおひたし、天ぷらなどで食べられますが、花が咲く前だと、毒草のケマンソウが葉がよく似ているので、採取には注意が必要です。
春の開花時期に根茎を掘って、水洗いして陰干しにして乾燥させたものを、生薬名で藳本(こうほん)と呼びます。腰痛、腹痛、頭痛などの鎮痛には、1日量5~10グラム、水0.4リットルを半量まで煎じて毎食後3回に分けて服用するとよいそうです。
「和漢三才図会」には「藳本」の名で根を薬として使う記述があり、「昇る太陽(の気)。足の太陽経の風薬である。気は雄壮。寒気が太陽経に鬱積して頭痛のするときには必用の薬である。頭頂部痛はこれでないと頭痛を除くことができない。」とあります。頭痛については絶大な信頼を得た薬のようですね。頭痛持ちの私、早速、根を採取して干しました! じっくり自分で生体実験します。
そういえば、去年のお正月にマージナルキッチンにご飯を食べに行った時、佐藤裕加さんが本格的な秋田スタイルのきりたんぽをごちそうしてくれて、「秋田ではセリを必ず根っこをつけて入れるんですよ。」と教えてくれましたっけ。
セリ科の植物の根には、何か特別なものがあることを、昔の人は経験で知っていたのですね。
「和漢三才図会」には根は紫とありましたが、採取したものはみな白かったですね。もう少しあとになったら紫がかるのかな?
花が咲き始めた全草を採取して煮出したところ、たいへん強い黄緑色の液となり、アルミで強い若草色、銅で透明感のあるウグイス色、鉄で、海松色から仙斎茶。(ニンジンの葉の染色結果に似る。)
どれも初夏の瑞々しい気の満ちた強い色合いで、見ているだけで元気が出てきます。
花言葉は「喜び」。2/9の誕生花。
参考サイト / 文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ ヤブニンジン
・http://www.e-yakusou.com/
・http://chills-lab.com/flower/
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第93巻
・「季節の野草・山草図鑑」高村忠彦/監修 日本文芸社
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