ササゲ・恥じらいははじめだけの薄黄色
【学名】 Vigna catiang Endl. var. sinensis King Vigna unguiculata
【英名】 Cowpea, Black-eyed pea(白色ササゲ), Asparagus bean
【別名】 大角豆(たいかくず=ささげ)、ミタビ、 ササンキ(アイヌ語)
【生薬名】 豇豆(とうず)
【科】 マメ科
中央アフリカ原産のものが、中国を経由して9世紀に渡来。
ツル性のものと、ツルのない直立するものがあります。
「大角豆」の字を当てるのは、豆の端が少し角ばっていることから。
「ササゲ」という名前の由来については、細いサヤを小さな牙に見立てて「細々牙」とした、あるいは、若いサヤが、物を「捧(ささげ)る」かのように上を向いているから、など諸説。
欧米では、食用ではなく、主に土壌改良のために栽培されていて、英語名cowpeaは恐らくここからきているのでしょう。
日本で生産されている豆はほとんどが赤色ですが、輸入豆には「ブラックアイ」と呼ばれる白色で臍の周辺部分だけ黒いものや、褐色、黒色のものもあります。(沖縄で作られている「黒小豆」は、実は黒色のささげ。)
関東では、赤飯にはアズキの代わりにササゲを用いることが多いです。これは、アズキが、煮たときに皮が破れやすいため、「腹切れ」→「切腹」という連想を生み、武家の間で嫌われて、煮ても皮が破れないササゲの方を用いるようになったからだそうです。
和漢三才図会には「腎を補い、胃を健やかにし、営・衛(いずれも東洋医学独特の考えによる、脾・胃で消化された栄養物質)を整え、頻尿や下痢をとめる」とあります。また「汁に煮て飲むと、鼠莾(そぼう=ハシリドコロ Scopolia japonica Maxim.強力な毒草)の毒を解する」とも。
一昨年、裏庭の畑に植えて、ひと夏、たくさんの豆を楽しみました。はじめのうち、モノを捧げているような健気な姿の豆も、次第に下を向き、それはそれは堂々と、ふてぶてしく、長々とぶら下がります。こう言っては何ですが、恥じらう乙女が月日を重ねて、押しも押されぬ無敵のおバタリアンになっていく様を見るようでございます。ちなみに豆の味はバツグン。
その、畑に植えた「つるありささげ」を、収穫後に全草を煮出してみました。マメ科独特の甘い香り。アルミで明るい黄色、銅で明るい草色(ウールは翡翠色)、鉄で海松(みる)色、麹塵色。 花言葉は、「恥じらい」。 花は晩夏の季語、実で秋の季語。
参考サイト / 文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ササゲ
・http://www.mame.or.jp
・http://gkzplant2.ec-net.jp
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第104巻
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
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