ヤマハゼ・ミツバチの友は漆黒
【学名】 Toxicodendron sylvestre (Siebold et Zucc.) Kuntze,
Rhus sylvestris Siebold et Zucc.
【別名】 ハニシ、ハジ
【生薬名】 木蝋(もくろう) =ハゼノキの実の蝋
【科】 ウルシ科
大古から日本に自生する落葉木。古名「ハニシ」は、樹皮で染色をしたことから「埴にしめ」と呼ばれたの
が転じました。(樹皮で染めた茶褐色は、「黄櫨色(はじいろ)」といわれます。)
後に、ハニシ、ハジが転じてハゼとなったと伝えられています。「ハゼノキ」というのもありますが、これは、室町時代に琉球より伝わった別種です。
以前はハゼノキ=ヤマハゼでしたが、現在では、ハゼノキはリュウキュウハゼで、ヤマハゼとは区別されます。ヤマハゼは、ハゼノキと違い、花、葉、枝の両面に毛が生えています。ハゼノキは沖縄、九州、近畿
などの暖地に特に多く、ヤマハゼは、関東以南の各地に見られます。
古事記の中の、ニニギノミコトの「天孫降臨」のエピソードの中に、筑紫に降り立ったニニギノミコトを
出迎え、露払いを務めたアメノオシヒノミコト(天忍日命)、アマツクメノミコト(天津久米命)の二柱が、
波士弓(はじゆみ)というヤマハゼで作られた特別の弓を持っていたという記述があります。
ハゼノキやヤマハゼの実は、木蝋の原料となり、ろうそくの他、蜜蝋の代わりとして、軟膏、坐剤、光沢剤
などに用いられてきました。止血や腫れ物の解毒には、根の皮を乾燥させたものを煎じて、その汁で幹部を洗うとよいとされています。木蝋はうぐいす色のきれいな蝋で、パラフィンに比べると柔らかく粘りがあり、染め物ではろうけつ染めに用います。ヒビの入り具合にパラフィンより表情が出ます。
樹皮を染色に用いたことが名前の由来ですが、黄色い心材を用いた黄色の染色も知られており、これを下染
めにして、蘇芳(すおう)で赤をかけたオレンジ色をとくに「黄櫨染(こうろぜん)」と呼びます。
ヤマウルシほどではありませんが、人によっては、触るとかぶれの症状が出るので注意が必要。
5月の末に、カジュ祭でもおなじみの養蜂家・飯倉剛氏のお仕事場を見学させていただきました。
場所は小網代の森近くの空き地。
小網代の森は、三浦半島の南端部に残された、相模湾に面した約70haの森。森の中央にある谷に沿って流れる浦の川の集水域として、森林、湿地、干潟及び海までが連続して残されている、関東地方で唯一の自然環境と言われます。(ウィキ引用)
ボランティアによって遊歩道が整備されていて、バランスの良い植生や様々な小動物の様子を見ることができます。
そこに自生するヤマハゼは5月に花を満開にし(たいそう地味な花ですが)、飯倉さんのミツバチたちには、カラスザンショウと並んで、この時期の大切な蜜源の一つになっているといいます。
その花盛りのヤマハゼの枝葉を少しいただき、(注: 森の外の空き地にあったもの)煮出してみたところ、大変堅牢な色を得ました。
アルミで濃い辛子色、銅で鶯茶、鉄では見事な漆黒。
花言葉は「頭脳明晰」。
参考サイト/文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ヤマハゼ
・http://gkzplant2.ec-net.jp/index.html
・http://www.e-yakusou.com/
・http://www.geocities.jp/greensv88/jumoku-zz-yamahaze.htm
・http://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/plant/bungakusakuhin/kojiki.htm
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
| 固定リンク | 0
「鎌倉染色彩時記(染)」カテゴリの記事
- ウイキョウ・妖怪召喚の蒸栗色(むしぐりいろ)(2024.11.29)
- カイヅカイブキ・昇り竜は萱草色(かんぞういろ)(2024.11.28)
- レモングラス・爽やかすぎる草色(2024.11.13)
- シークワーサー・南国発の淡黄色(2024.11.12)
- メラレウカ・ふとももパワーの漆黒(2024.10.30)
コメント