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2019年1月24日

2019/01/24

ヤツデ・虫封じの朽茶色

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【学名】 Fatsia japonica
【英名】 Japanese Aralia
【別名】 ベンジョグサ(便所草)、天狗の羽団扇
【生薬名】ハッカクキンバン(八角金盤)
【科】  ウコギ科

学名のFatsiaは日本語の「八手(はっしゅ)」の発音が語源だそうです。
日本語の「八」には単に「多数」の意味があって、名前はヤツデ(八つ手)ですが、葉は数えてみたら7つとか9つとかに分かれているものが多いですね。

他に花が少ない秋から冬に長期間花をつけることで、昆虫たちを自分に一手に呼び寄せ、確実に受粉し繁殖するという策士。生き残るために、いろいろ考えているのね・・・。

葉の形が天狗の団扇を連想させて、家の敷地内に植えると魔除けになるという迷信もあります。工房の庭にはあちこちにヤツデの株があるのですが、これまで無事にやって来られたのはヤツデの魔力のお蔭かもしれません。
そういえば、加古里子さんの人気絵本「だるまちゃんとてんぐちゃん」にも、てんぐちゃんの団扇がうらやましいだるまちゃんが、ヤツでの葉っぱを見つけて大喜びする場面がありますね。このドヤ顔がたまりません。

Darumachan  (加古里子/著 福音館書店「だるまちゃんとてんぐちゃん」より)

乾燥させた葉は八角金盤という生薬。鎮咳、去痰には、乾燥した葉を煎じ服用するか、うがいをするとよい、また、リューマチ・疼痛、腰痛、あせもなどには乾燥した葉を入浴剤にするとよい、などの記述が見当たります。 ただし、服用については、濃度が高いと毒にもなるので素人は用いないほうがよいでしょう。

実際、別名ベンジョグサは、葉に多く含まれるサポニンが毒として働くので、生葉を刻んでトイレの便槽にいれ、蛆(ウジ)封じに用いたことに由来しています。ちなみに、臭い消しになるドクダミも栄えあるベンジョグサの称号を与えられています。

初夏に新芽を次々だし、ツヤツヤとよく伸びます。時々剪定をかねて染めますが、アルミで柔らかな黄色、銅で渋い茶色、鉄で海松茶から黒緑。

毒の本性を押し隠し、穏やかな色を提供し、魔力でみなに福を呼びつつ、陰で虫殺し、そして策を弄して生き抜く。
お主、なかなか、したたか者よのう。

花言葉は「分別」「親しみ」「健康」「おだやか」。
12/27日誕生花。

◎参考サイト/文献◎

http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
http://www.e-yakusou.com/
http://ja.wikipedia.org/wiki/ヤツデ
http://www.hana300.com/yatude.html
http://www.hanakotoba.name/
http://www.colordic.org/w/
http://ogak2.exblog.jp/page/2/
http://plant-name.seesaa.net/
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会

 (C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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アーモンド・神の男根の辛子色

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【学名】  Amygdalus dulcis
【和名】    ヘントウ(扁桃)、あめんどう
【生薬名】 ハタンキョウ(巴旦杏)
【科】     バラ科

学名のPrunus(プラナス)は、ラテン古名のplum(すもも)が語源。
中央アジア原産。スモモ、アンズは近種ですが、両者と違い、アーモンドは果肉があまり発達しません。

ギリシャ神話に面白い記述をみつけました。
寝ている間に流れ出たゼウスの精液が岩山を伝って大地が受胎する。生まれたのが両性具有の神アグディスティス。これを恐れたオリュンポスの神々がアグディスティスを去勢し(ええっ?!)、切り取った男根を投げ捨てたところからアーモンドの木が生える(ひょえーっ!)。
木は育ち、やがて実をつけ、その実をサンガリオス川の娘(ニンフ)ナーナが拾って胸に納めたところ、実は消えて、ナーナは身ごもり、産み落としたのが植物の成長と復活を司る神アティスである。(アティスはその後、松の木に身を変える)・・・。

20190124_213441 (アティス神像  ルーブル美術館蔵)

ギリシャの神様たち、なかなかエグいこと。

江戸時代の百科事典「和漢三才図会」には「あめんどう」の名で、本草綱目を引いて風聞として「回回国(新疆ウィグル自治区)に産する。いまは関西(中国河南省の函谷関より西)の諸地方にもある。樹は杏に似ていて葉は小さく、実も尖って小さく肉は薄い。核はウメの核に似て、からは薄く仁は甘美である。茶に入れて食べるが、味は榛子(はしばみの実)のようである。」という記述が見当たります。
別名の巴旦杏(はたんきょう)がジャカルタ近くのスマトラの国名バタンに由来すること、(江戸で)出回っているものは、ペルシャ産のものがオランダ船によってもたらされたものであることなども書かれています。ちなみに「あめんどう」はポルトガル語が語源だそうです。

いつもながら、和漢三才図会に記されている記述には驚かされます。江戸のいち町医者であった寺島良安の、知識欲、観察力には脱帽です。鎖国によって一切の情報を遮断されていたかに見えて、なんの、細かい外国の名前も、事情も、そこに産する物のことも、じつによく掴んでいます。情報の海でアップアップしているわたしたちより、学びたい気持ちが強かったみたいですね。

生薬では巴旦杏(種子)の名で「滋養、利尿に効果あり」という記述が「和漢薬」にあります。

山梨産のアーモンドの木の剪定枝をいただきました。
煮出してみると、ほんのりと杏仁豆腐の匂いがします。やっぱり仲間なんですね。絹よりウールの発色がよく、アルミで芥子色、銅で草色鶯色、鉄で強い濡羽色

花言葉は、「希望」「優しい愛情」「真実の愛」「無分別」「愚かさ」。
・・・「無分別」は、ゼウスたち、ギリシャ神たちのことかしら。
3月14日の誕生花。

◎参考サイト / 文献◎
http://www.hana300.com
http://www.e-yakusou.com
http://ja.wikipedia.org/wiki/アーモンド
http://www.hana300.com/tuta00.html
http://hanakotoba-labo.com
https://lovegreen.net/languageofflower/
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著  平凡社
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「世界植物神話」篠田知和基 / 著  八坂書房

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

 

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