イヌツゲ・嫁の意地は海松色
【学名】 Ilex crenata Thunb.
【英名】 Japanese Holly, Box-leaved Holly
【別名】 ヤマツゲ、 オオツゲ 、ネジノキ、 ビンカラズ、 ヨメノサラ
【生薬名】 柞(さく)
【科】 モチノキ科
日本各地の山地に生え、庭に栽植される常緑低木。
ツゲの名をいただいてますが、ツゲ科ではなく、モチノキ科。でも今日では、庭木としてこちらが「ツゲ」と称され出回っている気がします。
牧野植物図鑑では「ツゲに似ているが下品でツゲのように役立たない。」と、にべもない書かれようですが、高価なツゲ(クシが有名ですよね)の代用品として、印鑑や版木に使われることもあるようです。きれいに選定されたイヌツゲの木、庭木としてはなかなか素敵だと思うけれど。
ホンツゲは葉が対生、イヌツゲは互生。ホンツゲの実は枯れて裂けますが、イヌツゲの実は青黒く、丸いことで区別できます。
樹皮から鳥モチが採れます。タラヨウのモチと共にこちらは「青モチ」、モチノキの鳥モチを「白モチ」と呼びます
別名のヨメノサラは、「憎い嫁の皿はこれくらい(葉っぱ?)の大きさで十分」の意味とか・・・。なんだかなぁ。息子を持つニッポンの母の端くれといたしましては、考えさせられますねぇ。程よく子離れして、お嫁ちゃんには優しくしたいと思いますよ。
生薬の世界ではイイギリ科クスドイゲ、ブナ科コナラと並んで樹皮や葉を「柞(さく)」と呼びます。
根や樹皮を、黄疸、潰瘍、瘰癧(るいれき=結核菌の感染による頸部(けいぶ)のリンパ節の慢性的なはれもの。)に、葉をできものに用います。
昨年の大寒の頃、枝葉を煮出してみました。アルミで榛色、飴色、銅で路考茶 (ろこうちゃ)、鉄で美しい海松色。
下品と蔑まれ、嫁ぎ先では容赦ないパワハラにさらされているお嫁ちゃん、どっこい出た色はどれも品よく侘び寂び感が漂う芯のしっかりした色です。あっぱれ。
花言葉の「魅惑」に、虐げられても輝き続けるニッポンのお嫁ちゃんのタフな心意気を感じます。
◎参考サイト / 文献◎
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ツゲ
・http://ja.wikipedia.org/wiki/イヌツゲ
・http://www.hana300.com/
・https://niwa-iro.jimdo.com/樹木別の縁起/イヌツゲ/
・http://www.minamiharima-shizen.com
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第84巻
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著 医歯薬出版株式会社
| 固定リンク | 1
「鎌倉染色彩時記(染)」カテゴリの記事
- ニシキソウ・隠れた情熱の黒紅色(2024.10.05)
- スズメノカタビラ・死装束の檜皮色(2024.10.03)
- アメリカフロウ・寂しがり屋の必殺色(2024.10.02)
- ユスラウメ・富と繁栄の唐茶(からちゃ)(2024.10.01)
- コチニール・南米の真紅(2024.09.17)
コメント