ヒメシャラ・ちょびっとホーリーな墨色
【学名】 Stewartia monadelpha Siebold et Zucc.
【別名】 サルナメリ、サルタノキ、コナツツバキ(小夏椿)
【英名】 Japanese Stewartia (≒ナツツバキ)
【科】 ツバキ科
本州の関東以南、九州にかけての山中に生え、また、庭木として栽植される日本特産種の落葉高木。
ナツツバキの近種。ナツツバキより小振りであること、ナツツバキが、沙羅双樹に間違えられ「シャラ」と呼ばれたことが名前の由来です。
沙羅の木 森鴎外
褐色(かちいろ)の根府川石に
白き花はたと落ちたり
ありとしも青葉がくれに
みえざりしさらの木の花
この、森鴎外の詩に歌われている「沙羅の木」もナツツバキだといわれています。
ナツツバキの、真夏に真っ白な花を優雅につけ、すぐに散っていく清楚ではかない姿、つるつるした特有な樹肌の様子を、日本では自生しない「沙羅双樹」という霊樹に見立てたのでしょう。
そのナツツバキより小ぶりなヒメシャラ。ホーリー度数も、沙羅双樹がサマージャンボ宝くじ級なら、ナツツバキは前後賞、ヒメシャラは「ミニ」というところでしょうか。(例えが不謹慎か・・・。ご容赦)
いずれにしましても、沙羅双樹を彷彿とさせるナツツバキやヒメシャラは、昔から好んで仏教の寺院の境内に植えられていて、今もあちこちに名古木が多く残っています。
鎌倉では光則寺のヒメシャラ、明月院、成就院のナツツバキが知られています。初夏から梅雨の終わり頃に、小さな白い五弁花が朝開いて夕方に落ち、また翌朝次々と咲いて花を散り敷く様が、なんとも可憐です。秋になると紅葉も美しいです。
自宅の庭にヒメシャラの木が一本あって、花が咲き始めた初夏に少し枝を落として染めてみました。
木の可憐な印象に反して、どの媒染でも渋みの効いた色合いに。鉄媒染で出た墨色が、青く底光りして、夏の夜空を思わせる美しさです。
花言葉は「謙譲」「愛らしさ」。 12月2日の誕生花。
◎参考サイト / 文献◎
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ヒメシャラ
・http://www.hana300.com/
・http://www.e-yakusou.com
・https://plaza.rakuten.co.jp/lilyandrose/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第84巻
・「樹木大図説」 上原 敬二 / 著 有明書房
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