スギ・日本人の心の友は枇杷茶色
【学名】 Cryptomeria japonica D.Don
【英名】 Japanese Cedar
【別名】 イソキ、 サボク(沙木)
【生薬名】 サン(杉)
【科】 スギ科
昨今、春先になると、この名を聞くと「気が重くなる」、「恐怖を感じる」などの"症状"が、日本全土に見られますが(笑)、この木ほど、わたしたち日本人と縁の深い木もございますまい。
日本特産の常緑高木。漢名で「倭木(わぎ)」というところからも、日本に古くからある木であることがわかります。
和名の由来は、すくすくと成長する木、スグ(直)、スナオキ(直木)、ススミノキ(進みの木)が転じたなど諸説あり。
日本の文化とは、それはそれは深い関わりがあります。軽く、木目が美しいことから、建築材として幅広く使われてきました。桂離宮の柱も北山杉。樹皮は、屋根や外壁を葺いたりするのに用いられます。材木、皮ともに、水に強く、乾きやすい性質が、高温多湿の日本の気候にあっているのですね。
その他、様々な生活雑貨も作られてきました。中でも、日本酒の仕込み樽にはスギは不可欠だそうです。酒樽ってスギだったんですね。
それ故か、新酒の季節には、それを知らせるために酒屋には蒼い杉の葉でつくったくす玉(すぎ玉)が軒に飾られます。
(写真出典)
枝葉や樹脂は生薬としても様々に用いられてきました。樹脂には皮膚や粘膜を保護や消炎作用があります。 また、葉には精油を含有していて、血液循環、疼痛などに有効とされています。
ひび、あかぎれなどに、樹脂を薬用アルコールに溶かして、1日2~3回患部につけるとよいそうです。 肩こり、筋肉痛には、樹脂を和紙などに塗り患部に塗布、乾いたらお湯でぬらしてはがします。
葉は、捻挫、挫傷したときに、煎じた液で洗浄します。
和漢三才図会には、杉の皮の灰を卵の白身で練ったものを塗るとやけどや切り傷に効くという記述があります。
二階堂、覚園寺奥のレインボーステイの裏庭で、杉を伐採したというので、枝葉を貰い受けました。
裏庭では杉の香りが満ち、切った杉の幾つかに六文字が切られています。これがうわさのスウェーデントーチですね!
スウェーデンやフィンランドなどで、昔から使われている料理用の焚き火の道具。正式には「スウェーディッシュトーチSwedish Torch」というそうです。切り込みの中央に枝葉などで着火すると、杉はよく燃えるといいますが、レインボーのまきこさんが試してみたら、あまりの火力で鍋やフライパンを乗せるどころではなかったそうです。うーん、自由研究の蟲がうずきますなぁ。やってみたい、スウェーデントーチのお料理。
花粉症の元凶になって以来、とかく悪者扱いのスギですが、杉林に身を置くと、その針葉樹独特の香りに包まれて、浮ついたキモチがすぅっと落ち着いてきて、なんとも心地よいです。
杉材には、竹に共通する、直線的な美しさ、深いのに重くないスパッとした潔い印象があって、そこが日本の美意識にあっていたからこそ、古来からずっと愛されてきたのでしょう。いえ、スギがその美意識を育てたのかもしれません。
現代でスギ花粉が問題なのは、昭和40年代に、照葉樹の原生林を切り開き、お金になるスギを次々と植えたこと、その後、輸入の材木に押されてそのスギが使われなくなり、放置されてしまったことに原因があるといいます。人間(特に日本人の)の勝手に翻弄された木といえるでしょうね。
森のいいバランスが回復することを願ってやみません。私にはそのためになにができるかしら。
煮出すと、林と同じスッキリした芳香につつまれ、アルミで柑子色(こうじいろ)、銅で路考茶(ろこうちゃ)から枇杷茶(びわちゃ)、鉄で空五倍子色(うつぶしいろ)。
俳諧では、花は春の、実は秋の季語。
花言葉は「堅固」「雄大 」。杉の葉の花言葉は「あなたのために生きる」。9/30の誕生花。
◎参考サイト / 文献◎
・http://ja.wikipedia.org/wiki/スギ
・http://www.hana300.com/
・http://www.e-yakusou.com/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第82巻
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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