カラハナソウ・ビールの夜明けはトキ色
【学名】 Humulus lupulus var. cordifolius
【英名】 hop (近種)
【別名】 キツネノチョーチン
【科】 クワ科 (一部アサ科の記述も)
本州中部地方より以北と北海道の山地に自生する、雌雄異株のつる性の多年草。
和名の由来には、葉の出方が、唐絵(唐〜宋に中国で描かれた、またはそのスタイルの絵画)に描かれる松の葉に似ている、という説、奈良〜平安時代に確立した「唐花文様」(写真右)という図柄に風情が似ているから、という説、他の物にからんで生長する「からむ草」から、唐(から)を当て字にして、唐花草の名になったという説など、諸説。
ビールに苦味と香りをつけるホップは近種。セイヨウカラハナソウと呼ばれます。まつかさ状の実は、ホップと同様の香りがします。
1869年(明治2年)「蝦夷地」は「北海道」となり、開拓のために明治政府は「開拓使」を組織します。そのお雇い外国人技術者トーマス・アンチセルは、1872年(明治5)、道内の地質などの調査時に、現在の岩内町で野生ホップを発見。これを原料にビールを作ったが、苦味が出ないまずいビールになってしまったそうです。
この、野生ホップと間違えた草が、カラハナソウだったのです。その後、ホップに似たカラハナソウが自生するならば、ホップも育つと考えられ、明治9年(1876)、ホップの苗を輸入して、北海道で本格的なビール醸造が始まりました。
翌年、札幌にホップ園を設け本格栽培に着手。しかし植え付けた苗の大方が枯れてしまうことが何年も続きました。
1881年、試行錯誤の末、ようやく「開拓使麦酒醸造所」で使用するホップは全て道内産で賄うことに成功。これが現在のサッポロビールへと発展します。
カラハナソウがなければ、国産ホップのビールは生まれなかったかもしれませんね。それから100年余り。これほど日本人がビール好きの国民になったことを開拓使の人々は想像したでしょうか。
夏~秋に、果穂を採取して、風通の良い場所で陰干しして乾燥させ、お茶にして服用すると、健胃、鎮静、利尿に効果。
織り教室の生徒さんが、登山の際に白馬で採ってきてくれた果穂のついたカラハナソウのつるを煮出してみました。染液は美しい赤茶色となったので、染液を一晩おいて酸化させ、赤みを強めて染めてみました。アルミで美しい鴇色(ときいろ)、銅で柿渋色、鉄で涅色(くりいろ)。
セイヨウカラハナソウ(ホップ)の花言葉は 「希望」「信じる心」「天真爛漫」「不公平」。
10月4日、10月28日の誕生花。秋の季語。
◎参考サイト / 文献◎
・http://www.e-yakusou.com/
・http://ja.wikipedia.org/wiki/カラハナソウ
・http://www.sapporobeer.jp/
・https://sapporofactory.jp/beer_museum/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第96巻
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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