クバ・南国の神は璃寛茶色
【学名】 Livistona chinensis , Livistona subglobasa Martius
【英名】 Chinese Fan Palm, Chinese Fountain Palm
【別名】 ビロウ(蒲葵、枇榔)、ホキ, アズムサ、アジマサ、ウロシ
【科】 ヤシ科
学名のLivistonaは、英国エジンバラ近郊リビンストンの貴族の名に因みます。
九州、沖縄、小笠原、および台湾の暖地の海岸近くの森林に自生します。枝は無く、広い葉が長い柄につきます。実は青。潮風に強いことから、海岸近くに街路樹として植えられることも多いです。同じヤシ科のビンロウと混同されがちですが(別名がビロウですからね)、全くの別種。
沖縄では、蛇に似た幹肌と、高木であること、常緑樹であることから、生命の根源である男根の象徴とみなされて、古代から「神」「聖木」とされてきました。
特に、御嶽(おたけ・うたき)と呼ばれる沖縄の聖地に生えるクバは、神が降臨する神木とされているそうです。
クバの葉は、昔から沖縄の人々の生活と深い関わり合いをもち、葉を乾燥させ屋根を葺き、小型の舟(サバニ)の帆となり、クバ扇、クバ笠、クバみの、クバジー(クバの葉のつるべ)などが作られてきました。また若芽は食用にもなります。
古名ではアジマサと呼ばれていました。古代天皇制においては、松竹梅よりも神聖視された植物で、公卿(上級貴族)に許された檳榔毛(びろうげ)の車(牛車)の屋根材にも用いられました(写真右)。天皇の代替わり式の性質を持つ大嘗祭においては、現在でも天皇が禊を行う百子帳(ひゃくしちょう)の屋根材として用いられています。天皇制と沖縄の神様に繋がりがあるのが、とても興味深いですね。
鎌倉路地フェスタの仲間、二階堂のレインボーステイでは、年に2回なないろマルシェという楽しいイベントが開かれています。昨年5月のそのマルシェに出ていたお店が、乾燥して白くなったクバの葉を売っていて、レインボーステイの真喜子さんが、私にも分けてくれました。
煮出してみたところ、辛口の土臭い香りが漂いました。まるで、「地」のエネルギーを凝縮して溜め込んでいたような強い香りです。渋い黄色の染液となりました。
アルミのウール出てた山吹茶、銅媒染の璃寛茶色(りかんちゃいろ)に神が宿ったような輝きが。
沖縄市の市の木。
◎参考サイト / 文献◎
・https://www.weblio.jp/content/クバ
・http://mintun.exblog.jp/18516240/
・http://omoro1989.ti-da.net/e2936900.html
・http://gkzplant2.ec-net.jp
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 3」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
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