ミント・呪いは美しき岩井茶色
【学名】 Mentha spicata L.(スペアミント)
Mentha x piperita L. (ペパーミント=セイヨウハッカ)
Mentha canadensis L. var. piperascens,
Mentha arvensis var.piperascens (和ハッカ)
Mentha japonica(ヒメハッカ)
【英名】 Mint
【別名】 オランダハッカ(スペアミント)、チリメンハッカ(スペアミント)
【生薬名】 薄荷(はくか=和ハッカ)薄荷葉(はっかよう)
【科】 シソ科
古くからハーブとして用いられているミント。葉の小さいペパーミント、葉が大きく縮れているスペアミントなどいろいろな種類があります。
スペアミントはペパーミントよりよりもハーブとして用いられた歴史は古いそうです。
聖書でハッカとされている植物はスペアミントの一種ともされるナガバハッカ(Mentha longifolia)とされています。
学名の「Mentha(メンタ)」は、ギリシア神話に登場し、呪いによりミントに姿を変えたメンテ(Menthe)の名に由来。
<<ギリシャ神話・メンテの逸話>>
冥界の王ハーデースは、ニンフのメンテの美しさに心を奪われる。それを知った妻のペルセポネーは「お前などくだらない雑草になってしまえ」とメンテに呪いをかけてしまう。それ以来この草は「ミント」と呼ばれ、ハーデースの神殿の庭で咲き誇り続けた。地上でも芳香を放ち、人々に自分の居場所を知らせるのだという。
日本には在来種である和ハッカがあります。スペアミントは江戸時代にオランダから伝わったため、オランダハッカと呼ばれていました。
和ハッカについて和漢三才図会には「薄荷は猫の酒である」という面白い記述が見つかります。猫が食べると酔うのでしょうか・・・?試したらまずいでしょうね・・・。
生薬では薄荷葉(はっかよう)。中枢抑制、血管拡張などの効果があり、芳香性健胃、かぜの熱、頭痛、めまい、消化不良、歯痛などに効能。スペアミントでも同様の効能が期待できます。
メントールの含有量は和ハッカが一番多いと言われ、「農業全書」には、和ハッカの栽培の記述があります。
文化14年(1817年)には、岡山で盛んに栽培されたとされ、その後、広島、山形、北海道などと全国で栽培されて、昭和の始めには、世界のハッカの生産量のほとんどは、メントールを多く含む日本産だったといいます(!)
その後、合成メントールが開発され、日本産の天然メントールの輸出の必要が無くなり、主力輸出品目ではなくなりました。残念ですね。来年の畑ではぜひ和ハッカの栽培に挑戦したいと思います。
スペアミントは、メントールの含有量は他のミントに比べ少ないですが、チューインガムの生産のため、今でもアメリカで大量に栽培されています。
鎌倉の野原でも、昨今スペアミントをよく見かけます。たいへん繁殖力旺盛で、夏の間は散歩のついでに摘んで、よくサンティーなどを作ったりしていましたが、今まで染めたことはありませんでしたので、この夏、初めて煮出してみました。すっきりとした涼しい香りが漂って(染場は暑かったですけどね・・・)、濃いうぐいす色の液になりました。
アルミ媒染でカナリヤ色、銅で市紅茶(しこうちゃ)、鉄で岩井茶。どれも透明感があり、堅牢です。
花言葉はミント全般では「美徳」「効能」 。スペアミントでは「あたたかな感情」。
3/16、7/21、12/21の誕生花。
◎参考サイト/文献◎
・http://ja.wikipedia.org/wiki/スペアミント
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ニホンハッカ
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ペパーミント
・http://www.e-yakusou.com
・https://hananokotoba.com
・http://www.hana300.com
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 3」 北隆館
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第93巻
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
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