ジュズダマ・ロザリオは璃寛茶
(写真右→出典)
【学名】 Coix lacryma-jobi
【英名】 Job's tears
【別名】 ズズゴ、トウムギ(唐麦)、カワジュズ
【生薬名】 川穀(せんこく)/川穀根(せんこくこん)
【科】 イネ科
インドなどの熱帯アジア原産。水辺に生息する一年草です。
日本では稲作以前に食用としていて、稲作の伝来とともに栽培されなくなり野生化したという説があります。縄文人の主食の一つ、ということでしょうか。もともと自生していたものを縄文人が栽培していたのかもしれませんね。
学名のlacrymaはラテン語で『涙」を意味し、jobiは旧約聖書のヨブを指しています。それが英語名にも反映されていて、ジュズダマは欧米では「ヨブの涙』と呼ばれています。
ヨブ記は、神に信仰を試され数々の苦難に合い、それを乗り越えて神に祝福されるヨブの物語。このヨブさん、試練に合うたびにわんわん泣いて、最終的に「よく耐えた」と神様に褒めてもらって幸せになり、またまた号泣したという涙まみれの男。その涙、涙のヨブの物語を、涙型のジュズダマの実に連想したのでしょうか。
<<ヨブ記16章20節>>
わたしの友はわたしをあざける、しかしわたしの目は神に向かって涙を注ぐ。
そんなわけで、ヨーロッパの修道院では、この「ヨブの涙」でロザリオをつくるそうですよ。インドで貧しい人々の終末医療に身を捧げたマザー・テレサの愛用のロザリオも、ヨブの涙だったそうです。
でも、もともとジュズダマはヨーロッパにはなかったはず・・・はて。
日本を含めた東アジア各地では、このジュズダマをつないで子どもたちが首飾りや腕輪をつくる伝統的遊びがあります。これを布教のためにアジアにやってきた修道士たちが見て、涙型のジュズダマに「ヨブの涙」連想してロザリオに用い始めたのではないか・・・と推察しますが、いかがでしょう。
日本では、その名もジュズダマなので、仏教の念珠にあるかしらと探してみましたが、ムクロジはありますが、ジュズダマ製のものは見つかりませんでした。子供の遊びで終わっているようです。あまりに身近にたくさんあるものは、ありがたみを逆に感じないのかもしれませんね。
ちなみに、lacryma(ラクリマ)で思い出しましたが、ご存知ONE PIECEのドレスローザ編でヴィオラが繰り出す必殺技は「イエロ ラグリマ、目くじら!」。(で、目からクジラの形をした涙を出して、敵をやっつけちゃう) Lágrimaはスペイン語の「涙」。ラテン語圏、似ています。Hierroはラテン語でもスペイン語でも「鉄の」の意味。 鋼鉄の涙攻撃だったのか。
すみません、脱線しました。
ヨクイニン(薏苡仁)の名で知られるハトムギは近種。和漢三才図会には「薏苡には二種類あって、一種は殻が薄くて米が多く(ハトムギ)、一種は殻が厚く硬くて米は少なくて念珠にするとよい(ジュズダマ)」という記述が見つかります。
種子を採取日干しにして乾燥させたものを、生薬で川穀(せんこく)、また秋に根を掘り上げて、水洗い、日干しにしたものを、川穀根(せんこくこん)といいます。煎じて服用するとリウマチ、神経痛、肩こりに効果。健胃、解熱、利尿、解毒の効果があります。
慢性胃腸病、かいよう、下痢、リューマチ、神経痛、水腫、こしけ、イボとりや美肌保全にも高い効果を発揮するハトムギには及びませんが、ジュズダマを殻ごと砕いて代用にする、という記述も見当たります。
常磐にお住まいのYさんのお宅で、今年は一際ジュズダマがよく茂っているとお聞きし、まだ緑色の実がたわわについている茎葉を少し分けていただきました。
煮出すと、トウモロコシやエダマメを煮ているようなほっこりした香りが漂い、液はきれいな黄色に。
アルミで柔らかな淡黄色、鉄で海松色(みるいろ)、銅で得た力強い璃寛茶 (りかんちゃ)が特筆すべき美色。
花言葉は「祈り」「恩恵」「成し遂げられる思い」。
秋の季語。10/10・10/11・11/9の誕生花。
参考サイト / 文献
・http://www.hana300.com/
・http://www.e-yakusou.com/
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ジュズダマ
・http://www.hanakotoba.name/
・https://rosary-francesca.com/note/catholic/jobs-tears/
・https://pfaf.org
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」第103巻 寺島良安 / 著
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