バジル・偉大なる青白つるばみ
【学名】 Ocimum basilicum L.(スイートバジル)
Ocimum tenuiflorum(ホーリーバジル)
【英名】 Bazil
【別名】 メボウキ、カミメボウキ(ホーリーバジル)
【生薬名】 羅勒(らろく)
【科】 シソ科
インド原産で、アジア南部、中東などに分布する多年草。ですが日本では越冬できないため一年草として扱われるのが一般的です。
学名のOcimumはギリシャ語の「okimon(香りを楽しむ)」が語源、basilicumは同じくギリシャ語のbasilikos (王室の) が語源です。「香り高き王族」といったところでしょうか。そんな由来からか、ギリシャにはバシレイオス(Basileios)という男性名が多く存在します。歴史上の偉人にもその名は見られ、たとえば、ギリシャ正教の教父で日本では「大バシリウス(バシレイオス)」の名で親しまれている聖人は、英語圏ではSt.Basil the Great と言われています。この大バシリウスさん(カトリック教徒では聖バジリオ)、4世紀にカッパドキア(現トルコ内)に実在した神学者で、三位一体論を確立しただけでなく、ハンセン病患者を含む病人の救済(当時は考えられないこと!)、貧民、孤児の救済などの福祉事業に大きく貢献したことで知られています。
キリスト復活ののち、イエスの墓のまわりにバジルが植えられたという伝説もあるそうで、ギリシャでは、キリストが磔になったゴルゴダの丘に生えていたバジルをハレナ女帝(コンスタンティヌス1世の母太后・聖ヘレナのことか?)が、ギリシャに持ち帰ったとされています。そこから食用、薬になったとなれば、名前に「王」の意味を持つもの納得ですね。ギリシャ正教会のなかには、今でも聖水を調合するのにバジルを使い、さらに聖壇をバジルで飾っているところもあるそうです。
インド、ネパール地方では、ホーリーバジルは聖なるハーブ “ツラシ” として知られ、アーユルヴェーダ医学では重要な薬草として扱われ、宗教的にはヴィシュヌ神、クリシュナ神、シヴァ神に捧げられる供物にもなるそうです。
ホーリーバジルはタイ料理にも欠かせませんよね。
日本には中国経由で江戸時代に入ってきました。葉より、黒い種を薬として重用したようです。種を目の中に入れると、水分を吸って蛙の卵のように寒天状に膨れて目のゴミを拭い去ったことから、「目の箒(ほうき)」の意味でメボウキの和名が付けられたそうです。この種を特に生薬では「羅勒子(らろくし)」と呼びます。
和漢三才図会には「3月頃植えるとよい。魚のアラ汁、米のとぎ汁、溝の泥水などを肥料にすると香りがでてよいが、糞尿をやるのはよくない。乾いた種子を用いて目のかすみ、塵が目に入ったものを治す。3〜5粒を目の中に入れると、湿り膨れて塵と一緒に出てくる。目はちょっとの塵が入ってもころころするのにこの種子なら何の妨げにもならないのはひとつの不思議である。」という記述がみつかります。現在ではバジルシードと呼ばれアジアンスイーツに用いられることも多いです。
地中海料理では葉を用いたジェノベーゼソース(バジルペースト)が知られています。カジュの畑でも毎年植えていて、バジルペーストをつくるのが夏の何よりの楽しみです。
葉は生食または乾燥したものをお茶として服用すると、抗鬱、殺菌、鎮痙、解熱、食欲増進、制吐、副腎皮質刺激、去痰発熱性疾患(風邪、インフルエンザ)、食欲不振、嘔吐、腹痛、胃腸炎、偏頭痛、不眠、倦怠、疲労に効能。外用ではニキビ、嗅覚欠損、虫刺され、ヘビの咬傷、皮膚感染症に効くとされています。日本では虫に食われやすいバジルは、トマトのそばに植えると虫食いになりません。
収穫後の夏の終わりに、畑に残った茎と根を煮出してみました。どの色もすべてを終えた命の末期を思わせる静かな色合いで、アルミで蒸栗色(むしぐりいろ)、銅で鶸茶色(ひわちゃいろ)、そして鉄で出た青白橡色(あおしろつるばみいろ)が実にクール。
夏真っ盛りの時期に葉ごとに出せば、もっと強い色合いになったことでしょう。
花言葉は「好意」「好感」「神聖 」「高貴」「良い望み」「強壮」
「憎しみ」「 何という幸運」 。
1/25 6/24 7/22 10/15の誕生花。
参考文献 / サイト
・http://ja.wikipedia.org/wiki/バジル
・http://ja.wikipedia.org/wiki/メボウキ
・https://www.hana300.com
・http://www2u.biglobe.ne.jp/~simone/more/pan/basil.htm
・https://idun.exblog.jp/2280064/
・https://www.takeda.co.jp/kyoto/area/plantno49.html
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第99巻
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