セイヨウニンジンボク・アブラハムの香油は藍媚茶
【学名】 Vitex agnus-castus ※Vitex cannabifolia(ニンジンボク)
【英名】 Ghaste tree, Chasteberry, Abraham's balm, Monk’s pepper
【別名】 イタリアニンジンボク、なまえの木
【生薬名】 牡荊(ぼけい)
【科】 シソ科 (クマツヅラ科)
南ヨーロッパ、西アジア原産。
学名のVitexはラテン語の「vieo=結ぶ」の意味で、この植物でかごを編んだことに由来するといいます。agnusは「神の子羊」、castusは「汚れない」「信仰深い」の意味。
英語名に「アブラハムの香油」とあるところからも、西欧では古い時代から香料、薬、香辛料に用いてきた歴史が伺えます。コショウの代用品として使われたことがMonk’s pepperの由来でしょうか。
日本には江戸時代に中国からニンジンボクが伝わってから、各地で自生するようになりました。
和漢三才図会には、ニンジンボクの木の枝で刑杖(棒で背中や臀部を打つ体罰につかう棒)を作ったという記述があります。硬さがちょうどいいとか? 叩くといい匂いがして罪が清められたとか?? どんな棒か見てみたいですねぇ。そしてセイヨウニンジンボクは明治時代に渡来しました。これで明治政府が体罰用の棒を作ったということはなさそう(笑)。
イギリスのサイトによれば、古くから高い薬効が認められ、近年ではその効能の多くが科学的にも証明されているそうです。中でも特に女性ホルモンの働きのバランスを整える効能で知られています。ドイツでは月経前症候群 (PMS) の症状の治療薬として正式に認可されています。 また民間では堕胎薬として用いられていた歴史もあるとか。
中医学ではニンジンボクは総称して「牡荊」といわれ、茎葉、根、実、いずれも用います。婦人病、不眠、に効果。経絡を開く作用があるとされます。和漢三才図会には「牡荊子(ぼけいし=実)は骨間の寒熱を除き、胃の気をよく通す。 咳を止め、気を下す。炒り焦がして粉末にし飲服すれば、心痛および婦人のこしけを治す。」とあります。
6月にみちくさ部長とハーブ王子に引率していただき、北鎌倉を散策した時、個人宅のお庭に植えられたセイヨウニンジンボクがきれいな紫の花を咲かせているを見つけました。ハーブ王子のお話では、セイヨウニンジンボクは、古代エジプトでミイラをつくるときに防腐剤として使われたということです。お茶にして飲んだら、老けないかしらん。
香料に用いられるだけあり、貰い受けた枝葉を煮出すと、キク科の植物に近い芳香の中に、華やかな甘さのある香りが立ち込めました。うーん、どこかで嗅いだ香りなんだけど、思い出せない・・・。漢方な感じは間違いなくするのですが。
黒黒しい染液となり、どれも渋みときつみの利いた堅牢な色合い。
アルミで菜種油色から鶯色、銅で鶯茶、鉄で藍媚茶。花の咲く前であれば、もうひと色明るくなるものと思われます。
花言葉は、「思慕」 「純愛」 「才能」 。7月22日の誕生花。
◎参考サイト /文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/セイヨウニンジンボク
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ニンジンボク
・http://www.zoezoe.biz/
・http://search.eisai.co.jp
・http://www.pfaf.org
・https://www.language-of-flowers.com
・http://gkzplant2.ec-net.jp/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第84巻
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