玉楠(タブノキ)・ハマとペリーと路考茶色
【学名】 Machilus thunbergii
【別名】 イヌグス, タマグス, ナンタブ
【生薬名】 楠(なん)
【科】 クスノキ科
本州から沖縄、朝鮮半島南部、中国に分布する常緑高木。
神社などに鎮守木として植えられることも多いです。
艶のある細長い葉は、裏が白っぽいのが特徴。夏に黄色の小花をつけ、その後に着く小さな丸い実は秋には黒紫になります。
和漢三才図会には、「船舶に多く使われる」という記述があり、実際、タンニン質を多く含むことから水に強いことが知られていたのでしょう。
名前の由来は、朝鮮語で丸木舟を意味するtong-baiが訛った、霊が宿る木とされていたことから、「霊(たま)の木」と呼ばれ、それがしだいに訛った、など諸説あります。
八丈島でつくられる織物「黄八丈」は黄色のものが有名ですが、江戸時代は鳶色や黒のものもありました。その鳶色や黒の染料としても、タブノキは用いられていたらしいです。水に強い特性を生かして漁網を染めるのにも使われました。
和漢三才図会にはほかに「肌理(きめ)が細かく錯縦(たてまじり)の文章(もよう)が多いので「樟」といい、彫刻するのによい」という記述も見当たります。
生薬では樹皮を天日干しして粉にしたものを「楠(なん)」といいます。これを塩と水で練ったものを塗ると、脚のひきつれや水腫を治すといわれています。またこの粉を水で練ったものを線香の材料としたり、もち粉と混ぜて食用にしたりしたそうです。
横浜開港資料館には「玉楠の木」と呼ばれる文化財指定のタブノキが中庭に保存されています。
1859(安政6)年、横浜は開港場となりました。ペリーが上陸した場面を随行画家ヴィルヘルム・ハイネが描いた絵には、この玉楠の木が描かれているのです。
浮世絵や写真にも残っています。(横浜開港資料館HPより)
その後火災にあいながらも、明治期はイギリス領事館敷地内で、その後も震災や戦争をくぐり抜け、歴史の生き証人として、現在も元気にしています。
この話を耳にして以来ずっと、この木を染めてみたいなぁぁと思っておりました。この9月、思い切ってお電話したところ、ご厚意で、玉楠の木の枝葉を拾わせていただける幸運を得ました。(さすがに切るのはちょっと・・・ということで。)
だいぶ雨風にさらされていた枝葉だったようで、色は薄めでしたが、アルミで白つるばみ、銅で亜麻色から鶯茶、鉄の路考茶が美色。
生葉、生枝ならば、鳶八丈や黒八丈の色も十分出たに違いありません。
花言葉は「威厳」「高潔」。9/25の誕生樹。
◎参考サイト / 文献
・http://www.hana300.com/
・http://www.e-yakusou.com/
・http://ja.wikipedia.org/wiki/タブノキ
・http://www.kaikou.city.yokohama.jp/guide/tamakusu.html
・https://blog.goo.ne.jp/
utsumiseikanosegaredesu/e/6dc8bd722b5b8a130608566828968602
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「和漢三才図絵」 第82巻 寺島良安 / 著
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