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2021/04/24

2021/04/24

平織りが支えたナンバ歩き

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 ご存知のように日本には伝統的な織りがいろいろあります。

 その多くのルーツは沖縄に求められると言われています。沖縄には精巧な絣(かすり・糸を予め柄通りに染め分けて織る技法)のほか、花織り、道屯(ロートン)織りなどの糸を意図的に( シャレぢゃないから! )飛ばす変化織りもたくさんあります。 
 でも、よーく探ってみるとないんですよ、ある織りが。江戸時代までの日本の織りには。

 明治に入ってから日本の織りものに、ある大きな変化が現れました。
 それまでの日本の織りは「平織り」、いわゆる経糸と緯糸が一本おきにしっかり織り合わさる織り方が基本でした。どんな複雑な変化織りもベースになっているのは平織りです。通気性がよく伸びの少ない平織りは、高温多湿の日本の気候と、和服という民族衣装の着こなしには最適でした。

 この、四角い布をただ巻きつけるだけの和服を軸に、日本人は立ち居振る舞い、武芸や諸々の作法の伝統を築いてきたのです。
 そのため江戸時代までの日本人の躰の使い方には、躰を「斜めに伸ばす」あるいは「ひねる」という動きがほとんどありません。
歩き方の基本は「ナンバ」。つまり、右手と右足、左手と左足と、同じ側の手足が前に出る型が定着していたのです。これは朝鮮にも中国にも見られない体の運びだそうです。(写真右端)

 そこへ西欧からウール(羊毛)という新しい繊維と洋装が入ってきたことで、それまでの平織りにかわり「綾織り」が一般的に広まったのです。
 綾織りは、経糸が二本ないし三本飛びながら斜めに斜文を描き出す織りで、同じ密度の平織りより地厚で丈夫、しかも斜めの伸びがよいのが特徴です。
 この斜めの伸びのよさは、躰の曲線に合わせて布を裁断し立体的に縫い上げる洋服づくりには不可欠。躰に沿う美しい曲線を出すには平織りより綾織りの布が適しているのです。
 男性の急速な洋装化と官服の需要により、明治から大正期には日本でも盛んに綾織りの広幅服地が機械生産されるようになりました。
 
 それと時を同じくしてドイツから西欧式の軍事教練が導入され、日本人の躰の使い方にもいよいよ「ひねり」が入ってきます。
 それまでのナンバ歩きから、両手を交互に大きく振りながら躰をひねって歩く現在の歩き方と走り方が除々に定着し(写真左端)、古武道に見られるような身のこなしは、次第に姿を消していったのです。

 江戸時代までは当たり前だったこのナンバ歩き。近年、日本で見直す風潮が生まれています。陸上スポーツ界では、ナンバを取り入れたトレーニングでエネルギーロスを解消しタイムアップに繋がったという報告も。また、小笠原流作法、茶道、各種武道でもナンバが基本で、これを身につけることで、身体の歪みが解消され、腰痛、頭痛、内臓疾患の改善につながっているそうです。

 現在の私たちの衣料生活は、夏物以外はほとんど綾織りが主流になっていますが、キモノ(平織り)を着る時間を持つことで、古来日本人の頑健な身体と美しい身のこなしを取り戻せるかもしれませんね。


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