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2021/05/12

お宝持ち講座「生まれつきの不器用はいない」

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みなさん、こんにちは。
お宝持ちになる講座の時間です。

準備体操、十分でしょうか?
では始めます。
今日のテーマは昨日の5つの準備体操のその1「生まれつきの不器用はいない」について

前述のように、私はモノ作りなので、この講座も「作ってみることで豊かになる」という話が主軸になります。
手作りする、という話を始めると、必ず「私、器用じゃないから」という人がいて、話が止まるんですよねぇ。
でも、今日からはそのフレーズは使えませんので。(笑)

私の工房のある古民家はカジュ・アート・スペースという、ま、一種のシェア・スタジオになっていまして、97年のオープン以来ずっといっしょにやっている人気のピアノ教室があります。かくいう私も生徒です。
ひとりひとりに寄り添ってくれるやさしいK子先生に、丁寧な指導をもうン年も受けているのに、ちっとも上達しない私。え? 腕くぐる? 指またぐ? と、いちいち大騒ぎ。

対してK子先生は、当たり前ですが、ショパンなんかを華麗に弾いてみせてくれます。鍵盤をすべるK子先生の指の動きのなんと華麗なこと!
そのK子先生がですよ、私を指して言うわけですよ。「まきこさんはいいよねー、服とか作れて。私は不器用だから」と。

ちょっと、待て。
その華麗に動く指の持ち主が、「私は不器用」って、なんじゃい。

展覧会などにお越しくださる方の中に時々、商品を手にとって 「たなかさんって器用ですよね」とおっしゃる方があります。
プロの染織家に「器用ですね」と言うのもどうかと思うけど(笑)、ま、それは置いといて。
そう言われたときは素直に「ありがとうございます」と言いながら、心の中ではつぶやいています。

「当然です。なんたって、場数がちがいますから」と。

これが今日の講座のポイントです。

そう、私が機を織ったり、自分の服を縫ったり、編んだりするのがうまいのは、単にその仕事の「場数を踏んでいる」からに過ぎません。40年もやっていればうまくもなります。はじめはひどかった。

そんな私も、ピアノは下手です。つまり、あることについて手先は器用に動くけど、別のことではうまく動かない。
そのことについて、場数が足りないのです。

K子先生は私の逆。ただそれだけのことです。

「昔の人は器用だった」とよく言いますが、それは、日常生活で「つくる」が大事な仕事だったからです。コンビニもユニクロも100円ショップもないんですから、限られた家計をやりくりして、家族に十分な服だの布団だのオシメだのを手に入れようと思ったら、作るしかない。場数、踏みまくりです。当然、みんなうまくなります。うまくなれば生活が豊かになるんですから、嫁入り前の娘は、子どもの頃からせっせと技を磨いていたわけです。

つまり、器用、不器用は生まれつきでも才能でも何でもありません。場数の問題です

でも、うまく出来ないとわかっていることに挑戦するのって、億劫ですよね・・・。しかーし、そこの扉が開くと、お金なくてもおシャレできます。 インテリア、ぐっとグレード上がります。そう、 リッチな生活が待っています!

はい、暗示にかかったところで、次はどうやって「楽しくやるか」について。

イメージだけで、頭の中で針仕事や編み物なんかを「難しく」していませんか?
この「難しい」という言葉、最近、乱用が目についてしょうがないんですよね。
例えば、今の私に「無酸素でエベレストに登れ」「アンジェリーナ・ジョリーばりのいいヲンナになれ」は相当に難しいです。
でもあなたの言う「洋裁って難しいよね」「編み物って難しいよね」は用法が違うと思います。
この場合、正しくは「面倒くさそうだよね」ではないでしょうか?
お宝持ちになるためには、安易にものごとを「難しい」でくくらないことを強くおすすめしたい

はい、たしかに、手仕事はイコール面倒くさいことです。

・・・なんですが、この「面倒くさい」過程が、実はお宝の山なんですよ!

いっきにゴールを目指そうとするから「面倒くさ」く見えるだけで、その一瞬一瞬はヨロコビそのもの!
考えてもみてください。
ただの布っペラが、あーしてこーして、といじっているうちに服になっちゃうんですよ?
ただの真っ直ぐな一本の毛糸が、セーターとかになっちゃうんですよ!
すごくないですか? 発明した人、すごくないですか?!
これが楽しくないわけありません。
え? 疲れる?
疲れたら、休みましょう。そこでやめにして、明日にしましょう


尻込みしてしまうのは、失敗してしまうのが怖いからでは?

はい、ここで今日のポイント、その2。

今日から「失敗」という言葉は使わないようにしましょう
思い通りに行かなかったその仕事は、失敗ではなく「データ取り」
そう、あなたはスキルを磨くための貴重なデータを手に入れたのです。すばらしい。

かくいう私も、そして恐らく仲間のプロのモノ作りたちも、新しい作品なり商品なりを完成させる裏には、人様にはお見せできないような試作の山があるわけで、そのあーでもないこーでもないの過程がすなわち「場数」につながっているのです。

「過程」は大事です。それこそがお宝です。いっぱいデータ取りした人は、それだけでお宝持ちです。

人はなぜ、スポーツ観戦にあんなに夢中になるのでしょう。勝ち負けという結果だけが大事なら、あとで結果だけスポーツニュースで見ればいいじゃありませんか。
でもそうじゃない。結果だけを公開しているスポーツなんてありませんよね。
みんな、その結果にたどり着くまでの「過程」に魅せられているのです。

人間はそういう風にできているのだと思います。

さあ、まずは眠っているお裁縫道具を引っ張り出しましょう。編み棒も探してみましょう。そして、かわゆい小箱などに 使いやすい、出しやすい、しまいやすい形におさめてみましょう。

すると、材料になりそうなものが、ほら、引き出しの奥から、押し入れの隅から、出てきたりするでしょ?

え? どれも持ってない?
大丈夫。買わないでくださいよ。「だれかー、ゆずってー」と叫べばいいんです。市役所の「ゆずってください」コーナーに登録するとかね。
ちゃんと手に入ります。あ、これについては後日「流れをつくる」で詳しく。

長くなりましたので、本日はここまで。
明日は、準備体操のその2「自己流バンザイ」について。



<<写真>>
織の教室の生徒さんが、工房の糸で編んだカーディガン。体にあてがいながら、四角をつないで身頃をつくり、袖の脇の下だけ三角を作ったというシンプルデザイン。減らし目も「適当」だそうです。

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