クロモジ・お蝶夫人は黒鳶色
(写真撮影 : 原暁子)
【学名】 Lindera umbellata, Benzoin umbellatum
【英名】 Japanese spice bush
【別名】 トリキ トリシバ
【生薬名】 釣樟(チョウショウ)=根皮 烏樟(ウショウ)=枝葉
【科】 クスノキ科
室町時代の宮中で働く女官たちの間では、衣食住に関する言葉を直接口にするのを憚って、◯◯モジ(文字)と隠語的に表現する習慣がありました。
杓子(しゃくし)→シャモジ、 髪の毛→カモジなどなど。
この木で作られる黒楊枝も、その例に倣って「クロモジ」と呼ばれたことが今日の名の由来と言われます。
このほかに、枝に地衣類の一種が付いて文字のように見えるから、樹皮に黒い斑点があるから、などの説もあります。
北海道を除く日本各地の山地に自生する落葉低木。 春に黄色の小花がつき、小球状の果実は10月ごろに黒く熟します。
枝葉はそれはそれは良い香りがします。その押しの強さは、樟脳(しょうのう)と同じクスノキ科であることを納得させますね。
この木で楊枝をつくるのは、噛むと良い香りが広がり、その汁が消化を助け、虫歯や歯肉炎を治す効果があるとされていたから。
根皮を煎じたものは急性胃炎や脚気に効果。
材は去痰(きょたん)作用があり、せきやたんを抑える場合に用いられます。
5〜10%の煎じ液は消毒効果も期待できます。
アルコールに刻んだ枝葉を1週間浸して作るチンキには、抜け毛、ひこう性脱毛、円形脱毛症に効果。
西洋医学では、精油を健胃剤として用います。入浴剤として用いると、たむし、腰痛、神経痛、リュウマチなどに効くとも。
材は、辺材・心材ともに灰白色で緻密で、軽く軟らかで割りやすいために、洋傘の柄などに用いられてきました。
いやいや、どこからみても欠点のない、というか、「この人、トイレとかいくのかな」と思わせる完璧なアイドル、その華麗さ、香りにある気高さ、そして実力は、まるで「エースをねらえ!」のお蝶夫人。
枝を煮出すと、独特の強い芳香。どの媒染でも、その押しの強い香りを裏切らない、大変堅牢な強い色が染まりました。特にウールとの相性が良いようです。
アルミで濃い香染(こうぞめ)、銅で黒鳶色、鉄で憲法黒茶。
花言葉は「誠実で控えめ」。3/21、4/1の誕生花。
・http://www.hana300.com/
・http://www.e-yakusou.com/
・http://ja.wikipedia.org/wiki/クロモジ
・https://replant.tokyo/kuromori/
・https://www.flower-walk.jp/7303/032102.html
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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