サトウキビ・常夏の若菜色
【学名】 Saccharum officinarum
【英名】 Sugar cane
【別名】 カンショ、カンシャ(甘蔗)、ウージ、おうぎ
【生薬名】 カンショ、カンシャ(甘蔗)
【科】 イネ科
学名のSaccharum は、ギリシャ語の 「sakcharon(砂糖)」が語源。
インド、ニューギニア地方原産。
紀元前1000年頃にはインドで栽培されていた、とのこと。
17世紀に奄美大島に伝えられました。
世界的に見ると、砂糖の約60%がこのサトウキビから作られ、40%がサトウダイコン(甜菜)から作られているそうです。
日本では沖縄、南西諸島、奄美群島、高知、愛媛などで多く栽培されています。
ちなみに、香川や徳島では、やや茎の細い「竹糖」という種類が、和三盆の原料として栽培されています。
東洋医学的見地では、暑い地方で育つサトウキビから作られる砂糖は体を冷やす、寒い地方作られる甜菜糖は体を温める、と言われます。
和漢三才図会には「(中国の)江東、浙江(せっこう) 、閩広(びんこう)、湖南、四川のいずれにもあり、四川と嶺南のものが優れている。大変土地をつかれさせる」とあり、「蔗水(さとうみず?)は『甘で寒』。煎じて練って飴にすると『甘で温』。蔗水は気を下し、脾の気を助け、大小腸の働きをよくする。痰を消し、渇きを止め、酒毒を消す」とあります。
さらに黒砂糖(紫糖)には「棗(なつめ)と一緒に食べると虫歯を患う。フナと一緒に食べると疳(かん)の虫をおこす。タケノコと一緒に食すと消化されず、腹に塊のできる病となり、歩行困難となる」などの記述が見つかります。
幕末。薩摩藩の明治維新における財源が黒砂糖によるものだったことは、すっかり大河ドラマで知られるところとなりました。
これは、薩摩藩が奄美大島の島民にサトウキビ栽培を強制し、搾取したことによるのです。薩摩藩のこの圧政を、俗に「黒糖地獄」といいました。
ちなみに、薩摩藩からの略奪から守るために田んぼの中に隠した絣の織物が、田んぼの土で鉄媒染されて、のちの大島紬となりました。
現在、沖縄ではサトウキビの葉を使った「ウージ染め」と呼ばれる染めものも行われているようです。イネ科独特の黄色、ひき茶色などを楽しむことができます。量があればかなりしっかりした黄緑も。試染は少量でしたので、やわらかな蒸栗色、柳茶色、枯色などを染め上げました。
花言葉は「平和」。
寺島尚彦さん作詞/作曲の「さとうきび畑」に描かれている歌の世界観に、サトウキビに込められた平和への祈りを思います。
◎参考サイト / 文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/サトウキビ
・http://www.hana300.com
・http://www.u-jizome.jp/?page_id=74
・https://kawashima-ya.jp/contents/?p=31315
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」 第90巻 寺島良安 / 著
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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