アオギリ・鳳凰のすみかは山鳩色
【学名】 Firmiana platanifolia (L.f.) Schott et Endl,
Firmiana simplex (L.) W.F.Wight
【英名】 Chinese parasol tree, Phoenix tree
【別名】 梧桐(ごとう)、蒼梧(そうご)、碧梧(へきご)、ケナシアオギリ
【生薬名】 梧桐子(ごとうし=実) 梧桐葉(ごとうよう=葉)
【科】 アオギリ科
中国南部、東南アジア原産の落葉広葉高木。沖縄に自生するほか、日本へは奈良時代に渡来し、広く各地に植えられました。
本州、四国、九州にも分布し、伊豆半島や紀伊半島などの暖地に野生化した状態でみられることもありますが、塩害や、大気汚染にもよく耐えるので、街路樹や庭木などにして植えられているものが多いです。
近年は温暖化の影響か、鎌倉周辺でも実生のアオギリを時々見かますね。
キリ科のキリを「白桐」と呼ぶのに対し、大きな葉が桐に似て、幹が蒼いことからこの名があります。
7月中旬に黄色い花をつけ、秋にグリンピースのような実をつけます。さく果の一辺に種がツブツブとくっついているのがちょっと不思議です。 (写真出典)
葉と実が薬用となることが知られています。葉は、春~夏まで採取して、細かく刻んで天日で乾燥して、ミキ サーで粉末にして保存。種子は、10~11月に熟した果実を採取してたたいて種子を集めて天日で乾燥させる。血圧降下、動脈硬化予防には、葉の粉末に熱湯を入れて、1日3回食後に飲用。
腹痛・胃痛には、乾燥した種子10グラム水0.6リットルを煎じて1日3回に分けて服用すると、即効で症状が改善するといいます。飲み続けると健胃の効果あり! 炒ってつぶしたものを含むと口内炎や咳止めにも。
また、種子を潰して白髪に塗ると毛が黒くなるとも。・・・まじで?!
材は柔らかく細工しやすいので、昔から家具、楽器、下駄などをつくったそうです。和漢三才図会にも「山間に生えたもので楽器をつくる」の記述が見当たります。
そういえば、中国の「古琴」は伝統的にアオギリで作られることで知られていますね。
故宮博物院蔵 の古琴・「大聖遺音」(唐朝肅宗元年(756年) )
びっくりなのは和漢三才図会のこれ。
「梧桐は月日の正閏を知るという。葉は十二生え、一辺に六葉ある。下から数えて一葉を一月とし、上は十二月に至る。閏のある年は十三葉生え、小さな葉を閏とする」という遁甲術の書の一説を紹介しています。
これはすごい! カレンダー・ツリーですか! 今度じっくり観察してみることにしましょう。閏年は13枚・・・絶対だな、アオギリ!
中国の故事では、アオギリは鳳凰が棲むとされています。このことを受けて、日本の花札に「桐に鳳凰」の一枚がありますが、ここに描かれているのはアオギリではなく「桐」。いつの間にか入れ替わってしまったんですね。
毎年、自宅の庭の片隅に夏になるとぼぼーんと大きな葉を広げてすくすく育つ実生のアオギリがありまして、煮出してみました。青黒い液からは、
アルミで榛色(はしばみいろ)、銅で肥後煤竹色(ひごすすたけいろ)、鉄で山鳩色が得られました。
花言葉は「秘めた意思」「秘めた恋」「逞しい」。9月3日の誕生花
◎参考サイト / 文献
・https://ja.wikipedia.org/wiki/アオギリ
・http://www.e-yakusou.com
・http://www.hana300.com
・http://yamasakuran.seesaa.net/article/484834948.html
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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