« 2023/01/23 | トップページ | 2023/01/29 »

2023/01/26

2023/01/26

ブナノキ・目覚める縄文DNAの唐茶色

Buna01 Buna02
(写真出典 :   )


【学名】   Fagus crenata
【英名】   Japanese Beech 
【別名】   白橅(しろぶな)、 ソバグリ、ソバグルミ
【科】      ブナ科 

日本の温帯林を代表する落葉広葉樹。
北海道の道南の渡島半島を北限に、本州、四国、九州の南は鹿児島県まで分布します。

青森県津軽平野から秋田県能代にかけての白神山地は、最大級のブナの原生林としてよく知られ、1993年に日本で初めてユネスコの世界遺産に登録されました。

「橅」の字を当てるのは俗用。
腐りやすく役に立たないという意味で「木では無い」とされた・・・ってずいぶんな。

和漢三才図会にも「花はウツギの花ににて小さく白色。美とは最も縁遠い。柔らかで脆く溶剤とすることはできない。紀州の黒江(和歌山県海南市)にて杓子などを作っているだけである。最下級品」とさんざんな書かれよう・・・。

が、実際は、材質が堅く(?)緻密であるらしく、家具・曲木細工・パルプ材などに用いられているそうですよ。どういうこっちゃ。
燃焼に強いために、吹きガラスの木型に用いられることも。鬼つよぢゃありませんか。

そうそう、以前うちで上映会をした映画「奥会津の木地師」では、会津塗り用の生地椀を山の民の人々がブナで削っている様子が紹介されていましたよ! (この映画、必見です! 1000年の凄技!) 「木では無い」なんて、とんでもないわ。

古くは屠られた動物の骨や皮などをその枝にかけて供養する供儀の木とされいたらしい。また葉ずれの音から未来を占ったり、芽の出し方で景気や天候を占う地域もあったとか。同様の話は西欧にもあり、古代ローマの歴史家タキトゥスの「ゲルマニア」には、古代ゲルマン民族の風習として、ブナの枝を切って占いに使う話が紹介されています。

デンマークの国歌(市民国歌)には、ブナの木がうたわれています。

麗しき国がある
磯の香り満つバルト海の岸辺に
ブナの木が誇らしげに枝を広げる
丘や谷に風が優しく吹き降りる
古(いにしえ)の人々はデンマークと呼んだ
女神フレイアが住まうところ  

※フレイア・・・北欧神話に登場する愛と美の女神

別名のソバグリやソバグルミは、ブナの実がソバの実に似ている、胚乳がナマ食でき味がくるみに似ている、などに由来します。

ブナの原生林・・・日本古来の森の代名詞といってよいのでは、というくらい、個人的に心の深いところをくすぐられます。なんというか、自分の中にふかーく眠っている縄文のDNAがムズムズするのです。
西行さんは「花(桜)のもとにて春死なん」と言いましたが、私は秋、紅葉したブナの葉っぱを浴びながら秋に死にたいと思っています。


枯葉と枝では江戸茶色唐茶色海松(みる)色。実のカラでは黄朽葉色鶯茶海松色など。

山崎青樹氏によれば、新鮮な葉を煮出すと、鮮やかな朱色が染まるそうで、まさに縄文の赤だな、とその文献に載っている写真を見て思いました。いずれ機会があればぜひ、染めてみたいと思っています。


木言葉は「繁栄」、花言葉は「独立」、「勇気」。


◎参考サイト / 文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/ブナ
http://www.e-yakusou.com/
http://morinokakera.jp/

・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「続・草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
・「和漢三才図絵」第87巻 寺島良安 / 著

 

 (C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

| | | コメント (0)

« 2023/01/23 | トップページ | 2023/01/29 »