ヤマモモ・信頼の辛子色
【学名】 Myrica rubra, Morella rubra
【英名】 Red bayberry, Wax myrtle, Wax berry
【別名】 ヨウバイ(楊梅)、シブキ(渋木)
【生薬名】 ヨウバイ(楊梅)
【 科】 ヤマモモ科
学名の「Myrica」 は、ギリシャ語の 「myrizein(芳香、香料)」が語源と思われます。
日本では「渋木」の名で、古くから堅牢な染料として知られており、江戸時代ではよく用いられていました。
・・・って、知らなかった! 渋木がヤマモモだったとは! 今更かいっ。不勉強、甚だしい!
ずっとずっと、堅牢で、安定感のある黄色を染めてくれていた渋木。今までは染料屋さんで買っていたので、まさか、鎌倉の公園にも生えていたなんて。
灰汁で媒染して出る辛子色、金茶色が特に有名ですが、江戸時代の染色の指南書「紺屋茶染口伝書」には、鉄媒染で「憲法色」という黒を染めたことも記されています。
緑色の染料がなかった明治時代以前は、この渋木で染めた黄色に、藍で薄い青をかけて、緑を染めていました。
日本では丸い実のつくものを総称して「もも」と言い習わしていた節があり、のちに中国からバラ科の桃が渡来してからは、区別するために「ヤマモモ」と呼ぶようになった、という説があります。
春に開花し、その後赤い実を結びます。
熟したものは生食もできますが傷みやすいため流通はしていませんね。でも、もし採れるところに実が生っていたら、採取を強くオススメしたい。ジャムや果実酒が楽しいです。
和漢三才図会には「(実)は塩漬けして食べると痰を去り、しゃっくりをとめ、酒食を消化する。酒に醸したものを梅香酎といい、大変珍重される。仁はよく脚気を治す」などの記述が見当たります。
実際、生薬としても優秀で、とくに木の皮を「楊梅皮」といい、煎じて服用すれば下痢をとめ、また扁桃腺、口内炎や口内のただれには煎じ汁でうがいをするとよいそうです。打撲傷、捻挫には、楊梅皮(ようばいひ)末を、卵白や酢で練って患部に塗布。
しっしん、かぶれなどには煎じ汁を冷やして塗布します。
大船にお住まいの生徒さんが、近所で剪定されたヤマモモを、わざわざ皮を削って持ってきてくださいました。
うん、やっぱり裏切らない、頼りになる辛子色(アルミ)。銅媒染ではぐっと渋い桑茶色、鉄媒染では「紺屋茶染口伝書」の通り、憲法黒茶。
花言葉は、「ただひとりを愛する」「一途」「教訓」。 6/21の誕生花。 夏の季語。
◎参考サイト / 文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ヤマモモ
・https://hobbytimes.jp/article/20190527g.html
・http://www.hana300.com
・http://www.e-yakusou.com
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「和漢三才図絵」第87巻 寺島良安 / 著
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載