キランソウ・地獄の番人は根岸色
【学名】 Ajuga decumbens
【英名】 Creeping Bugleweed
【別名】 ジゴクノカマノフタ(地獄の釜の蓋)、
イシャイラズ(医者いらず)コウボウグサ(弘法草)
【生薬名】 筋骨草(きんこつそう)、白毛夏枯草(はくもうかごそう)
【科】 シソ科
本州、四国、九州、および朝鮮半島、中国に分布する多年草。
草全体がロゼット状に地表に這って円盤状の形になります。
ランナー(匍匐茎)のような花茎を出し地表を這います。
シソ科では珍しく、茎の断面が丸いのも特徴のひとつ。
3〜5月に小さなスミレに似た紫の花をつけます。
学名のAjugaはギリシャ語の「a(無)+jugos(くびき、束縛)」が語源。花弁の下唇の一方が隠れて見えないことを表しているらしいです。decumbensは「横臥した、伏した」の意味で、倒れたように見えても根が浮かない」の意味。
キランソウの名は、ランに似た紫色の花を意味する「紫蘭草(しらんそう)」が転訛した、茎を地面に伸ばして群生する様から、織物の「金襴」に見立てた、など諸説。
漢字では「金瘡小草」と綴りますが、これは中国名をそのまま当て字にしたもので、金瘡とは刀傷のことで、キランソウの葉を潰して傷に塗ると、切り傷や腫れ物に効用があることから。
別名のジゴクノカマノフタ(地獄の釜の蓋)は、根生葉が地面を這うように放射状に広がる様が、地獄の釜の蓋に見立てたもの。
また、さまざまな病気に対して薬草としての効能から医者がいらず、「これで地獄に落ちないで済む」という意味や、「病気を治して地獄の釜にふたをする」という意味が由来とも。これが「医者いらず」「医者ごろし」の異名も由来にも。
弘法大師が、この草が薬になることを教えたことから「弘法草」の名も。
開花期の頃、全草を採取し水洗いした後、日干しにしてよく乾燥させたものを生薬で「筋骨草」といいます。(この生薬の名前の由来、知りたいですねー。調べたけれどでできませんでした。筋骨隆々感は全くないんですが・笑)
煎じて服用すると鎮咳、去淡、解熱、健胃、下痢止めに効果。
また煎じ汁や生葉の絞り汁は虫刺され、切り傷、草かぶれ、うるしかぶれに用います。
和漢三才図会にも「葉を取ってかげ干しにし、黒焼きにして麻油といっしょに小児の草瘡に塗る。一、二度 塗れば治る」の記述が見当たります。
4月の中頃に、工房の門の近くのコンクリートのたたきの割れ目から葉を広げて、刺すようにきりりと輝く紫の花をつけているのを見つけました。まさに、地獄から這い出たみたい。
その薬効や名前から、ぐっと濃い色が出るかと思いきや、量が少なかったこともあってか、どの媒染でも癒し系の優しい色に。うーん、能ある鷹は爪隠す、というからなぁ。出し惜しみされたか?(笑)
アルミで木蘭色(もくらんじき)、銅で根岸色、鉄で油色。
仲春の季語。
花言葉は「「あなたを待っています」「追憶の日々」「健康をあなたに」。
5/24の誕生花。
◎参考サイト / 文献
・http://www.e-yakusou.com/
・http://ja.wikipedia.org/wiki/キランソウ
・https://www.jugemusha.com/
・https://www.hana300.com/
・http://chills-lab.com/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 3」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第92巻
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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