カニクサ・蟹もびっくりの草色
【学 名】 Lygodium japonicum (Thumb.) Sw.
【別 名】 シャミセンヅル,ツルシノブ,ナガバカニクサ
【生薬名】 カイキンシャ(海金砂)=胞子 キンシャトウ(金砂藤)=ツル、葉
【科】 カニクサ科 (フサシダ科)
東アジア原産。
特に、日本、中国、朝鮮半島、台湾などの地域で自生するシダ植物で、学名にjaponicumとあることからも、日本に古くからあったことがわかります。和漢三才図会にも名前が見られるので、江戸時代にはすでに意図的に栽培されていたこともうかがえます。
学名「Lygodium japonicum」は、ギリシャ語の「lygodes(柔らかい)」と「japonicum(日本の)」が組み合わさったもので、「日本原産の柔らかい葉を持つ植物」という意味。和名の「カニクサ」は、葉の形状がカニの足に似ている、このツルで子どもがカニを釣って遊んだ、など諸説。
その後、19世紀にアメリカやヨーロッパにも伝わりまして、現在では、世界各地の温帯や熱帯地域で自生 / 栽培されていますが、一部地域では
外的侵入外来種として問題視されているようです。クズと一緒ですね。
カニクサはシダ植物としては珍しいツル性ですが、ツルのように見える部分は実際は「長く伸びた一枚の葉」だそうです。
夏になると、工房や自宅の庭にも、モゾリモゾリとあらわれて、他の雑草を巻き込みながらちょっとしたナワバリを築きます。
このツルがなかなか手強くて、素手では切れないことも。その強さから、絶対に外来種だと思い込んでいたのですが、おお、日本産。外的侵入外来種? かまわん、ゆけーい! 世界で戦ってこい!
それぐらい強いツルだから、カニを釣り上げる時もカニのハサミに負けないのか?・・・などと妄想が広がりますね。
胞子は漢方では海金砂(かいきんしゃ)といい、淋病、膀胱結石の治療に用います。また全草を、消炎解毒、肺炎、急性胃腸炎、黄疸などに用いる、の記述も。
若葉は食用にもできるそうです。
夏に茂るカニクサのツルをくるくると巻いてリースにするとよい、と教室の生徒さんに教えていただきました。乾燥しても色を保ち、長く楽しめます。
煮出してみたところ、アルカリ抽出ではなかったにも関わらず、染液がきれいなみどり色になったのにはびっくり。それをそのまま糸に移し、アルミ媒染若菜色で、銅で少し渋くなりうぐいす色、そして鉄媒染の草色が特筆すべき美色。
花言葉は「誠実」「魅力」「魔法」。11/21の誕生花。
◎参考サイト / 文献
・http://ja.wikipedia.org/wiki/カニクサ
・https://terra-rium.com/ja/wiki/lygodium_japonicum
・https://hananoiwaya.jp/
・https://www.medicalherb.or.jp/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 3」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」第98巻 寺島良安 / 著
協力 : 林 由美子
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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