ソバ・縄文の琥珀色
写真提供 : 堀口裕子
【学名】 Fagopyrum esculentum
【英名】 Buckwheat
【別名】 クロムギ、ススジクサ
【科】 タデ科
学名のFagopyrumはラテン名の「Fagus(ブナ)」とギリシャ名の「pyros(小麦、穀物)」の合成語。
三つの角を持つ実がブナの実に似ていることから。esculentumは「食用の」の意味。
和名の由来は「稜(そば=角)」(実に3つの角がある)、畑の側(そば)に植えられる、など諸説。
長く中央アジア原産と考えられていましたが、近年の研究で、中国南部の雲南省であると言う説が有力だそうです。
日本には縄文時代には渡来していたと考えられます。(縄文の遺跡から側の花粉や実が見つかっている)。
なるほど、原産が中央アジアであればもっと遅くに日本に入ってきたでしょうね。雲南なら近いし。
文献に出てくるのは「続日本記」(722)が最も古く、元正天皇(680〜748年)が救荒作物としてソバを栽培するよう詔を出したことが記されています。
現在のような「そばきり」ができたのは江戸時代初頭。
それまではいわゆる河漏(かろう=ところてんのように押し出した麺)や、そばがきとして食することが多かったようです。
そういえば、ブータンの東部ではやはりソバを栽培していて、この、ところてん式「河漏」を作る道具を民家で見せてもらったことがあります。
探したけど自分で撮った写真がなかったので、ブータン研究所より拝借いたします。
(写真出典)
和漢三才図会には「粉に挽いたものを煎餅にしてにんにくを配して食べる」などの記述も見あたります。
また「気を降し腸胃を寛げるので、気が盛んなもの、湿熱のものによい。脾胃の虚寒の人がこれを食べると元気が抜けてしまってヒゲ、マユが落ちる」とも。ちょっとびっくり。でも昔のお医者さんって、患者さんの体質をよく吟味して、食べ物や薬を扱っていたんですね。
生薬としては全草、趣旨を乾燥させて用います。毛細血管の浸透性をよくするルチンを多量に含有するため、高血圧症の予防にお茶として服用するとよいです。
調理された蕎麦自身にはルチンがあまり含まれないため、蕎麦湯を飲む習慣が生まれたのですね。
厚木でソバを育てている教室の生徒さんから、収穫後の乾燥した茎と葉をいただきましたので、煮出してみました。
ほっこりした香りに包まれて、液は美しいウィスキー色に。
アルミで飴色や黄金(こがね)色、銅で琥珀色、鉄で海松茶(みるちゃ)色。
どの色も大地の気を吸い上げたような力強さがあり、なんとなく、縄文の風景が透けて見えるようでした。
「新蕎麦」や「蕎麦の花」で秋の季語。
「蕎麦刈る」で冬の季語。
花言葉は「懐かしい思い出」「喜びも悲しみもあなたを救う」。
9/24の誕生花。
◎参考サイト / 文献
・http://www.e-yakusou.com/
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ソバ
・https://www.jugemusha.com/
・https://kizamu.com/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第103巻
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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